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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第二十八話 統一に向けて
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めではありません、ご安心ください』
「……」
そんな嬉しそうに言うな。ますます安心出来ないだろう……、皆の不安そうな表情が卿には見えないのか?

俺の不安を他所にエーリッヒがローエングラム公に話しかけた。
『ところで一つ確認したいのですが……』
「何だ」
『銀河統一後の事ですが通貨の統一について考えていらっしゃいますか?』
「通貨の統一?」

呟いた後、公が“あ”っと声を上げてフロイラインと顔を見合わせた。フロイラインも虚を突かれたような表情をしている。
『フェザーン、自由惑星同盟を軍事的に征服した後、それを政治的、経済的に帝国と統合し一つの国家にしなければなりません。通貨の統一は避けては通れませんよ』
「……」
エーリッヒの言葉にローエングラム公の顔が悔しそうに歪んだ。またしてやられた、そう思っているのだろうな。

『帝国マルクとディナール、フェザーン・マルクとの交換比率を決めなければなりませんし、決めた後はそれに従って通貨を変換する必要が有ります。これは現物だけでなく電子も同様です。通貨の発行量がどの程度になるのか……。膨大な作業になりますがやらなければなりません。そして失敗は許されない、失敗すれば大変な混乱が発生します』

聞いてるだけで頭が痛くなってきた。通貨の統一? 軍人の俺には到底分からない事だが大変な問題だという事は分かる。周囲の提督達も困惑したような表情を見せている。
「黒姫の頭領、良いお考えが有りますか?」
問い掛けたのはフロイラインだった。公が幾分彼女を睨み気味だが気にすることなくエーリッヒを見ている。

『やはりフェザーン人を使うのが一番でしょう』
「具体的には」
『ボルテック弁務官を利用する事です。彼は帝国、同盟、両方の国家財政、経済状態について詳しい。彼を責任者としてチームを作り対応させる、それが最善だと思います』
会議室にざわめきが起こった。ボルテックは今国家保安庁で取り調べを受けている。それを利用?

「しかしボルテックは取り調べを受けているが」
ローエングラム公がそれを指摘するとエーリッヒが微かに笑みを見せた。
『彼に選ばせては如何でしょう。このまま犯罪者として扱われるか、それとも帝国に協力し栄達するか』
「……」

『通貨統一を成功させた暁には新たに帝国の通商を管轄する省庁を作りその責任者に任命する、そう提案するのです。彼が受けてくれれば地球教についても積極的に話してくれるでしょう。一石二鳥ですよ』
「なるほど」
なるほど、上手い手だな、敵ではなく味方に取り込むか……。ローエングラム公も頷いている、どうやらこの案は採用だな……。





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