第二十八話 統一に向けて
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皆も困惑を露わにしている。イゼルローン回廊を使えとは言い辛いよな、エーリッヒにまた協力を依頼することになる。でも言わなければならん、しょうがない、俺の役目だな。
「フェザーンには後方支援に必要な能力が十分にあります。航路が一本の方が護衛もし易い、効率を考えるのなら補給はフェザーン一本で行うべきでしょう。しかし問題はフェザーンがどの程度信用できるかです。反乱軍領内に攻め込んだ後、フェザーンが混乱すれば補給に影響が出ざるを得ません。それを考えるとイゼルローンからの補給は使う使わぬは別として保険として必要ではないでしょうか」
俺が発言すると皆が頷いた。
「保険か……、確かにイゼルローンからの補給はフェザーンに比べれば効率が良くない、辺境は発展してきているとはいえ後方支援能力はフェザーンには及ばないからな……。大艦隊を率いるとなれば、やはりフェザーンだろう。しかし、保険か……、ミュラーの言う事にも一理ある……。出兵までにフェザーンを何処まで掌握できるか、それが鍵だな……」
ローエングラム公の言葉は最後は呟く様な口調になっていた。艦隊司令官達もそれぞれの表情で同意している。
理想としては補給線は多い方が良い、しかし現実には補給線が多ければそれの維持そのものに大きな負担がかかる……。エーリッヒ云々は別としてイゼルローンからの補給は効率が悪いという問題が有る。皆が考え込んでいるとTV電話の通信音が鳴った。会議室の皆が顔を見合わせた、ここに連絡を入れてくる、緊急事態の発生だろうか? フロイラインが自分の前に有るTV電話を受信した。
「何か有りましたか? こちらは今会議中ですが」
『申し訳ありません、黒姫の頭領から通信が入っています。かけ直すように伝えますか』
オペレータの言葉でエーリッヒからの連絡だと分かった。エーリッヒは今フェザーンに居るはずだ、五時間ほど前にフェザーン制圧に入ると連絡が有った。どういう状況なのか、皆の顔が緊張した。
フロイラインがローエングラム公に視線を向けると公が頷いて“正面のスクリーンに繋いでくれ”と言った。フロイラインが操作するとスクリーンにエーリッヒが映る。エーリッヒは常に変わらぬ笑みを浮かべていた、僚友達がロキの微笑みと名付けた笑みだ。本心からではなく心を隠す微笑み。そこまで言わなくてもと俺は思うんだが……。
『ヴァレンシュタインです、皆さんお揃いのようですね』
「会議中だ、そちらはどういう状況なのだ」
『自治領主府、自由惑星同盟高等弁務官府、航路局、公共放送センター、中央通信局、宇宙港を六ヶ所、軌道エレベータ、物資流通センター、治安警察本部、 地上交通制御センター、水素動力センター、エネルギー公団を押さえました』
エーリッヒの答えに会議室に安堵の声が上がった。制圧は順調に進んでいるようだ。
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