参ノ巻
守るべきもの
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「イヤ鷹男と比べて同等ってそれは言い過ぎ…」
なんというか、大人の余裕みたいなものが違う。
「鷹男とは?」
「若君よ」
「ま、まさか瑠螺蔚さま、若君と…!?」
「え!?は、いやいや!違う!そんなことないからね!?大体鷹男があたしみたいなの相手にするわけないでしょ!御正室佐々の公子姫だし!ナイナイ!」
由良はほーっとため息をついた。
「そうなのですか。ようございました。いくら兄上さまでも、若君には敵いませんから…」
「なに、どうしたのよ由良。今日はやけに高彬の肩持つじゃないの。怒ってたんじゃなかったの?」
「それはそれ、これはこれです。私ははやく瑠螺蔚さまをねぇさまとお呼びしたいですからね。兄上さまには頑張って頂かなければ。ですが瑠螺蔚さま、兄上さまとご結婚なさるのが本当はお嫌なのですか?でしたら私も無理にとは言いません」
「イヤ、じゃないわ。ほんとよ。でも、ねぇ由良。あたしって多分贅沢なんだ。やっぱさ、前田の一の姫として生まれた以上、自分の結婚は自由に決められないって言うのはある。それに納得するしないは別にしても。だから下手すれば父上よりも年の離れた人に嫁ぐことだってないとは言い切れないのよ。祝儀当日に初めて相手と顔を合わせるなんてことも少なくないじゃない。だから、その点、あたしは大分恵まれてるんだと思う。相手は高彬だし。でも、なんだろう。なんかなーこう、あたしの知らないところであたしの相手を決められるって事が、なんかイヤ。結婚相手ぐらい、自分で決めたい。それが本当に高彬なら、あたしは待ってるんじゃなくて、自分から言う。だからー…」
あたしは言葉に詰まった。
そんな性格のこのあたしが高彬との縁談にぴーぴー騒がず比較的大人しくしているのは、どういうことなんだろう。
高彬のことは、決して嫌いじゃない。
でも、好き、って何。
月を見上げながら兄上は言っていた。この世の全てよりも愛していると。そんな激しい想いを、あたしは誰にも抱いたことはない。
だから多分まだ、あたしは恋を知らない。
「高彬のことが嫌いなんじゃなくて、あたしはまわりに流されているだけのこの状況が、不本意なだけなのよ、きっと」
あたしは、我が儘だ。
恵まれているから我が儘にもなれると知っているのに、それでもまわりの優しい人たちの好意に胡座をかくのだ。
だからごめん、高彬。もう少し、待ってて。
しんと沈黙が落ちた。
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