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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の3:盗賊包囲
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あ、あの・・・乱暴しないで・・・」

 多勢に無勢。いきなり剣呑な雰囲気に出迎えられたパックは臆した様子で降参する。処世術として身に着けた曖昧な笑みも、エルフの者達には挑発以外の何者でも無いようで、彼らはより強い不快感を抱いているようだった。
 四方を騎馬で固められて肩身を苦しくさせながら、パックは森の中へと進んでいく。幸いにも森の住民からは視線を受けたりはせず、パックは自己の状況を分析する事が出来た。自らの立証能力を衛兵が信じないのであれば、後は元より現地に留まっている慧卓らが頼りだ。彼らが直接イル=フードまで話を通せば、それで自分は解放されるだろう。後は衛兵から下手な扱いを受けぬ事を臨むだけだった。
 そんな事を考えていると、彼の視線にふと、見覚えのある人物が立っているのを見た。その人物は垂れ目、垂れ眉が印象的な男、ユミルであり、衛兵に囲まれたパックを見て驚いたように目を開いていた。

「お前・・・もしや、あの時の?」
「あああっ、あなたっ!!酒場で逢ったあの時のっ!!ちょ、ちょうどいい!!俺取り調べを受けそうだからこいつを受け取ってくれ!!」
「ちょ、ちょっと待てっ、うおっ!?」

 パックは咄嗟に抱えていた箱を彼に投げつける。衛兵らが顔を歪めて此方を見てくるが、調停官一向の一人であるユミルの前で、手荒な真似を出来ないでいた。それを好機とばかりパックは続ける。

「あんたは俺が盗賊じゃないってわかってるだろうけどっ、こいつらは全然信じてないから!早い所ケイタクやアリッサ様に話を通してくれよ!?じゃなきゃ俺、いつまでもこんな目にあっちまう!!」
「何をやっている、早く来い!!」
「そ、それとっ!森へ向かう一団をこの前見たぞっ!数は壱千を超えるくらいだ!仲良くするような気配じゃなかった!こいつをイル=フードまでに通してくれ!頼むぞ、ちゃんと伝えたからなぁ!!」

 衛兵らに連行されるように、パックは森を進んでいく。ユミルは幾度も振り返ろうとしてくる彼の後姿を見ながら、懸念を深めた。

「・・・これは、まずいかもしれんな。ケイタク、早く戻ってこいよ・・・?」

 平穏に包まれていた森であったが、パックの話が本当であれば一気に荒涼と化すやもしれなかった。大の男達の大半が出払っている中、まともに抵抗出来るのは衛兵ぐらいしかいないからである。
 彼は仲間の下にこれを告げるため、急ぎ足でその場を後にする。危急なる事態の接近を前に、ユミルの心は俄かに焦燥を覚えていた。 

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