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王道を走れば:幻想にて
第四章、その7の3:盗賊包囲
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た。釣竿を握る手に刻まれた火傷の痕が、ぷるぷると震えている。

「・・・なぁ、もしかしたらお前の父ちゃん」
「言わないでよ。俺、まだあいつに仕返ししてないんだから」
「・・・するまでは、か」
「当たり前じゃん!俺にした酷い事、そっくりそのまま返してやるんだ!それで、あいつを殺してやるっ!!」

 少年の怒気が伝わったのか、釣り針に引っ掛かりそうであった魚が急に反転して、そのまま川上の方へ泳いでいった。少年は釣り糸を引っ張りあげて、忌々しげに言う。

「帰ってこなくていいんだよ。あんなやつ」
「そっか。・・・・・・なぁ、あれなんだ?」

 友人が指差す方向に目を遣る。川辺に沿うように遠方から、誰かが馬に乗った形で近付いてきた。夕焼けに照らされた騎馬の影が、まるで陽炎のように移ろっている。

「・・・敵だ」
「えっ?敵?」
「それしか考えられないって、もうこれヤバイって・・・!」

 少年は震えた喉を動かして呟く。先日、衛兵から聞かされた盗賊の襲撃の話が頭を過ぎり、彼に怯えを抱かせていたのだ。
 急ぎ立ち上がると少年は森へ駆け出そうとする。

「イル=フード様に御伝えしなくちゃ」
「お、おいっ、道具持てよ!!」
「分かったからっ、早く来い!」

 手元に転がっていた釣り道具を一切合切抱えると、少年らは森に向かって駆け出していく。衛兵に、誰かが近付いてきている事を知らせなければならないという義務感が、彼らの足を突き動かしていた。
 幾分か経たぬ内に、彼らが発見した騎馬が姿を露とさせる。雀斑顔の素朴な容姿をした男が、馬をのんびりと操っていた。

「おぉ・・・やっと着いたか・・・いやぁ長かったなぁ、あれからまた迷ったし」

 男とは遠く、王都からクウィス領を経て漸く目的地の森に辿り着いた平凡な王国兵、パックであった。早此処までの旅路で半月以上も掛かっており、疲労も中々のものがあった。しかし久しく会っていない友人と会えると思えば、パックのやる気は常よりも増して彼自身を奮い立たせていた。
 執政長官から預かった調停官宛の書簡が入った箱を大事に抱えて、パックはエルフが居住しているタイガの森へと近付く。その時、森の方から幾つかの騎馬が走り寄って来るのが見えた。一様に長い槍を携えており、温かな歓迎は望めそうになかった。その者達はパックの行方に立ち塞がると槍の穂先を彼に向けた。

「おい止まれっ!!貴様っ、人間が一体何のようだ!?」
「・・・えっと、あの、俺王国の兵士なんですけど、調停官様に届ける書簡を持ってきーーー」
「そのような嘘が通じると思ったか!?来いっ、牢に放り込んでやる!!」
「ちょ、ちょっとぉ!?俺賊じゃないですよぉ!?」
「それをどうやって証明するのだ!?いいから来いっっ!!!」
「ひっ!
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