第四章、その7の3:盗賊包囲
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音が何度もしており、ここに誰かが潜んでいると確信したからだ。
「・・・皆、準備はいいな」
『応』
「くれぐれも油断はしないで下さい。何が待ち構えているかは分かりませんからね」
私兵団の面々は一様に頷く。慧卓は倉庫の重い引き戸に手を掛けた。
「開けます」
言葉と共に、慧卓は身体をずらすように戸を開け放つ。暗い倉庫の中で埃が踊るのを視認した瞬間、突撃しようとした私兵団に向かって、大量の白い粉がぶちまけられた。チャイ=ギィ共々、皆鼻から思いっ切り吸ってしまって、その場に跪くなりして咳き込む。
「げほっ、げほっ・・・けほっっ!!」
「けほ・・・な、なんだ、これは・・・!?」
「くそっ、小細工しやがって・・・!」
傍に居た慧卓は直ぐに鼻を庇ったのだが、その独特のきつい臭いまでは回避できなかった。咳き込みたくなる気持ちを抑えて彼は一人倉庫の中へと入っていく。
物資の袋や藁が集積された中を窺っていると、二階部分から男が鍬を投げつけてくるのが見えた。
「危なっ!?」
慌てて壁に寄り掛かるよう退避すると、さっきまで立っていた場所に鍬の先端が鋭く刺さった。慧卓は憤慨しながら二階部分へと繋がる梯子に手をかけて、上っていく。
二階部分へ上ると、奥の壁にエルフの男が寄り掛かっているのを見付けた。この男がおそらく、盗賊の棟梁だろう。慧卓は脇に挿していた鞘から剣を引き抜いて、速足に迫っていく。
「くっ、来るな!人間の餓鬼風情が!!」
「黙れ、鬼畜。お前とはもう語りたくない。さっさと死ね」
「誰がそうするかぁっ!!!」
男はくわっと目を開き、背後に回していた手をばっと前に振り向いた。瞬間、男の手が握っていた袋から白い粉が撒き散らされ、慧卓の身体全体に一気に振りかかる。直撃を食らった慧卓は胸と鼻を苦しくさせて、今度こそ激しい咳き込みをさせた。
「けほっ、まっ、またかぁっ!?」
「馬鹿めぇっ!!!」
慧卓に向かって、逆に男の方から迫ってくる。反射的に剣を翳すと、それに男の剣閃が当たるのを感じた。相手は疲労によって弱っている筈なのに、慧卓はそれを抑え切れずたたらを踏んでよろめく。自らの頭が何故か回らなくなるのを慧卓は感じた。
(な、なんだ・・・頭がくらっとする・・・)
振りかかった粉によるものか咳き込みが抑え切れず力が出ないのは勿論であるが、それ以上に身体が何故か熱くなる。まるで熱に浮かされるように顔が熱くなって、思考が回らなくなるのだ。
「あああああっ!!!」
「くそっ・・・!」
容赦無く男は慧卓に迫ってくる。自暴自棄となった男の剣が猛威を振るうかのように幾度も振られ、慧卓はそれを何とか受け止めながらもどんどんと壁際まで追い詰めていく。これは拙いと慧卓は感じて
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