第四章、その7の3:盗賊包囲
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徐々に開けられる道を進んでいる最中においても、盗賊らは一人、二人と確実に倒れていく。身体の至る所に刃傷を負いながら、失血を省みずに戦う姿は、鬼畜な敵でありながら見事な勇姿である。アリッサにはそう見えた。
遂に最前線まで達したアリッサは、馬を下りて、最期まで生き残っていた人間の男に向かって凛々しく言う。
「中々やるようだな、盗賊。骨のあるやつも居るとは、侮れんものだ」
「・・・」
「どうした言葉を返さんか」
再度の問いに答えは無い。疑問に思ったアリッサは彼をよく観察して、その側頭部の辺りからだくだくと血が流れているのを見て得心した。
「・・・耳無しか」
剣を音も無く引き抜いてアリッサは大きく上段に構える。対する賊は得物を失っていたが、地面に落ちていた槍を掴むと、態勢を崩しかけながらもそれを腰溜めに構えた。そして両者は出方を窺い合う様に動きを止めて、集中していく。
失血量からいって、男は後数度武器を振るえばまともに立てなくなると、アリッサは見極めていた。故に彼女は戦いを長引かせる魂胆を毛頭抱いていない。互いに全力を出し合えるよう、最初の攻撃で全てを結する心算であった。
兵等は固唾を呑んでその沈黙の光景を見物する。息を切らしながら盗賊は唾を何とか飲み込み、覚悟を決めたかのように地を蹴り、一直線に槍を突き出した。アリッサはそれに合わせてかっと瞳を開き、すぐさま足を斜め後ろに引いて、一気に剣を振り下ろした。
「はぁぁあっ!!!」
直上から振り下ろされた剣先が、鋭き速さで迫る槍の穂先の辺りに食い込み、勢いのまま一気に槍を半ばから裁断する。返す刃でアリッサは、爆発させるように身体を前に滑らせ、男の胸部目掛け剣を一気に突き立てた。剣先が胸板を破って背中へと貫く。男が衝撃で瞠目する一方で、まだ攻撃は終わらぬとばかりにアリッサは剣を引き抜いた。
「せぇぇいやぁぁっ!!」
赤く濡れた剣閃が横一線に薙ぎ、男の血塗れた頸を胴体より切り離した。血を切断部から流しながら、幾秒か男の足が大地を彷徨うが、力尽きたように後ろのめりに倒れこんだ。男の血潮が仲間の死体にまで流れていく。
「これでまともに抵抗するやつはいなくなったな」
「へ、へぇ、そのようで。まとまって突っ掛かってくる奴ぁ、もう居ませんぜ」
「・・・とすると、最後は首領だけか。どこに行った、ケイタク殿?」
私兵団に任せた周辺区画の鎮圧も順調に行っているようだ、賊達の蛮声が徐々に小さいものとなっていた。虱潰しに当たれば慧卓と出会えるだろうと考えたアリッサは、賊の死体にさっと背を向けて馬に飛び乗る。そして剣を片手に、颯爽とその場を後にしてゆく。
彼女が探している慧卓といえば、村の外れ近くにある大きな倉庫の前で待機していた。中から物
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