第二十三話 少年期E
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さわやかに晴れ渡った空と東京タワー並みにあるのではないかと思うぐらいのビルが、いくつも建ちならんでいるのが俺の目に映る。昔アリシア達と一緒にビルの屋上から見下ろしたことがあったが、本当に大きな都市だと改めて感じていた。
地球でもこれほどの規模の都市はないのではないだろうか。さすがは管理世界の中心地だなぁ、と仰いでいた視線を元に戻す。その先には買い物をしている親子や、犬を散歩させている女の人、さらに慌てた様子のスーツ姿の男性に、話に花を咲かせている学生たちと様々な人が俺の目の前を通り過ぎていた。
「相変わらずクラナガンはでかいよなー」
『……次元世界の中心であり、心臓部とも言われる場所です。様々な世界から人が集まりますし、にぎやかにもなるでしょう』
人々が行きかうさらに先には、管理局地上本部の姿も見える。本部はクラナガン一の巨大な建物のため、中央区画内ならほぼ見つけることができるのだ。そのおかげでこの巨大都市で迷子になっても、とにかくあそこ目指せばOK! というのがミッドの共通認識らしい。
一応今俺がいるこの場所も、クラナガンの中ではそれなりに有名な待ち合わせスポットだったりする。交通機関が近くにあり、繁華街まで目と鼻の先という場所に佇む時計台。その周りには小さな噴水が作られており、花壇には季節の花が植えられている。噴水の水で作られるアーチは、前にテレビで紹介されていただけあって手が込んでいた。
……と、そんな細かいところまで眺めているのは別に趣味だからという訳ではない。ほかに本当にやることがないのだ。もうそろそろ水の仕掛けのパターンを覚えてしまいそうだ。俺は噴水のふちに腰掛けながら、足に肘を立てて頬杖をついた。
「……ほんとにここはおおきいねー」
『そのセリフはもう何回目ですかね。だんだん棒読みになってきていますし』
「……ちくしょう、忘れてた。久しぶりすぎてまじで忘れてたよ。こういう人だったよ、あの人は」
がくり、と俺は意気消沈する。最初にここに来たときは、特に気にしてはいなかった。むしろ裁判から解放され、久しぶりの外出に浮かれていたぐらいだった。近くの店に寄ってみたり、散歩してみたり、自分と同じ年ぐらいの子どもの身長と見比べてほっとしたりしていた。
今日は母さんにお昼は外で食べてくると伝え、待ち合わせの約束よりも俺は早めに外出した。だから多少相手を待つことはわかっていたのだ。そう多少なら、多少ならわかっていたんだ。すごく感謝しているし、いくら頭を下げても足りない相手だっていうのも理解しているんだけどさッ! 腹が減って思考がどんどん混沌としていく。
さっきからなり続ける俺の腹の音と、ここに俺が来てから1時間以上ゆうに過ぎていることを告げる時計台の鐘の音が噴水広場に響く。
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