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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第五話「紅髪の少女 × 再会 = 波乱」
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「いや、普通は逃げると思うが」


 クレアは鞭を片手にキッと俺を睨み、ズカズカと近づいて来た。


「さあ、あたしの契約精霊になってもらうわよ!」


「君も存外にしつこいな……」


 確か原作でもカミトに契約精霊になるように言い寄り、そのあまりの粘り強さに彼のほうから折れたのだったな。


 ということは、カミトの代わりにエストと契約した俺はこれからしつこく付きまとわれる訳か。それは勘弁願いたいな……。


「その要求は呑めないと言ったはずだが」


「でもアンタ、あたしの契約精霊奪ったじゃない! 責任取りなさいよね!」


「それは言い掛かりというものだ。第一、君とあの剣精霊との契約は失敗していた。そして君の契約精霊と剣精霊とでは残念ながら力量が違う。感謝しろとは言わないが、非難を受ける謂れわないと思うが」


 しかしクレアは癇癪を起こしたかのようにダンダンと床を踏み、駄々っ子の如く不満を露にした。


「うるさいうるさい、うるさーい! アンタはあたしの契約精霊になるのっ、異論は認めないわ!」


「んな、理不尽な……」


「人生は理不尽の連続よ!」


 その理不尽を押し付ける君が言うべき言葉ではないと思うが。


「で、でもあたしも寛容だから、一度だけチャンスを与えるわ」


 下から俺の顔を覗き込むクレアの深紅の瞳と視線が合う。


「なんで逃げたの?」


「寧ろなぜ逃げないと思ったのか知りたい。いきなり契約精霊にすると言われて、はいそうですかと頷く者はいないと思うぞ?」


「しゅ、主人をここまでこけにするなんて……逃亡奴隷には死あるのみね」


「人の話を聞け」


「このっ、このっ」


 足癖が悪いな。繰り出される蹴りを避けながらそう思う。上段蹴りを屈んで避けた際にスカートの中を直視してしまった。


「ふむ、黒か……君のイメージカラーではないな。――あ」


 油断した。ついポロッと本音が洩れてしまった。


 全身を硬直させたクレアは次第に顔を真っ赤に染めた。


「く、黒じゃないもんっ! いつもは白で黒はたまにしか……って、なに言わせるのよ、バカーッ!」


「いや、すまん。今のは失言だった」


「今のも失言よ! ううっ、見られた……」


 ベソをかくクレア。立ち直るまで俺は所在無さげに突っ立っているだけだった。


「そういえば――」


 しばらくして立ち直ったクレアは顔をしかめ、不機嫌そうに呟いた。


「さっき、騎士団のエリス・ファーレンガルトと喋っていたよね。それも仲良さそうに。どういうこと?」


「そのことか
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