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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第五話「紅髪の少女 × 再会 = 波乱」
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のだろうな。今度機会があれば食べさせてくれないか? 興味がある」


「ああ、機会があればな――って、誰が君なんかに振る舞うか!」


 横薙ぎに振るわれようとした一閃を柄に手を当てることで強制的に止める。刀身は中程まで抜刀され美しい白銀の刃が陽光で煌めいた。


「料理も結構だが、なんでもかんでも剣を抜こうとするんじゃない。いつか取り返しのつかない事態に陥るぞ?」


「う……」


 どうやら自覚はあるようで、ふいっと目を逸らした。


「やれやれ……。それで、俺の教室はどこなんだ?」


「君の教室はレイブン教室だ。優秀な問題児が集められた場所だ」


「レイブン……鴉か。洒落た名前だな。優秀な問題児というのは?」


「そのままの意味だ。……なぜそんな顔をする」


「いや、一人だけ心当たりがあってな」


 脳裏に浮かぶのは紅い髪の少女。俺を契約精霊にすると宣言した女の子だ。


 彼女も原作ではレイブンだったかな?


 この頃、原作を思い出し難くなってきた。転生してから十七年も経過しているのだから記憶が風化するのも致し方ないか。これなら爺さんに原作を全巻頼めばよかったな。今更ながら続きが気になる……。


「エリスもレイブン教室なのか?」


「私は最優のヴィーゼル教室だっ!」


 何の気も無しに聞いてみたのだが、エリスはいたく気に入らなかったのか、懲りずに剣を抜刀した。


 軌道は読めていたので首を傾けるだけで回避する。


「……っ、ファーレンガルト家の秘剣を躱すとは!」


「そう易々と秘剣を使うな……」


 階段を上がり長い廊下を進むと、ようやく教室が見えてきた。戸に掛けられたプレートにはレイブンと書かれてある。


 教室内に気配はなく、覗くとやはり誰もいなかった。どうやら全員外に出払っているようだな。


「ここまでで十分だ。案内ありがとう」


「ふ、ふんっ、礼など不要だ。君がわざと間違えてトイレに侵入しないように案内したまでだ。いらない混乱を招きたくないのでな」


 そっぽを向いて早足に立ち去るエリスの後ろ姿を見送り、俺は深いため息をついた。


 取り合えず、クラスの人たちが戻ってくるまで教室内で待機しているか。


 そう思い教室内に足を踏み入れた時だった。


 ヒュンと風を切る音がした。咄嗟に屈むと、首があったところを鞭が通過する。


「見つけたわよ、リシャルト・ファルファー!」


 見覚えのある鞭に聞き覚えのある声。振り返ってみると、やはりそこにはクレア・ルージュが立っていた。


「よ、よくもこのあたしから逃げてくれたわねっ」

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