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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第五話「紅髪の少女 × 再会 = 波乱」
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れまでに学院生活で信頼を得ていかないと、人数不足で出場できなくなってしまう。


 ……それは格好つかないな。


 ふと思い出したことがあった。


「エリス。一つ聞くが」


「なんだ」


 不機嫌そうに振り向く。原作通りになりませんようにと願いながら、


「俺の泊まるところはどこなんだ?」


 女学院に男子寮などあるはずがなく、かといって女子寮に泊まるわけにもいかないだろう。婆さんは宿舎を用意すると言っていたが――。


「なんだそのことか。安心しろ。学院は君のために多大な費用と労力をかけて素晴らしい宿舎を用意した」


 なぜだか、不安になる言い回しだな。エリスは近くの窓を開けた。


「ちょうどこの窓から見える。――あそこだ」


 指差す方向に目を凝らすと、大きな屋根のついた建物と、その隣にひっそりと佇む如何にも手作りですと言いたげな小屋があった。


 板を釘で打ち付けただけの小屋は子供の秘密基地としては最適だろう。しかし人が暮らすとなると――。


「……なあ、一応確認するが、もしかしてあの小屋か?」


「そうだ。私の契約精霊が作った」


 にべも無く頷くエリス。


「さすがにこれは――冗談がきついですよ、エリスさん」


「……っ!?」


 つい敬語になってしまった俺の腹の底から、沸々と黒い感情が湧き上がった。


 途方もない殺気を叩きつけられ、エリスの肩が震え出す。顔面は蒼白になり冷や汗が頬を伝った。


 しばらくエリスの顔を眺める。これではイジメではないか……。


 怒るのも馬鹿らしくなった俺は溜め息とともに殺気を消した。


「はあ……まあ、折角作ってくれたんだ。その意図はどうであれ、無駄にするわけにはいかないか」


 旅をしていた頃は野宿などざらだったことを思い出し、まだ屋根があるだけマシかと自分を説得させる。気を取り直して他のことを訊ねることにした。


「トイレや風呂はどうなるんだ?」


「あ、ああ……トイレは小屋の裏手にあるものを使え。風呂は悪いが共用だ」


「了解した」


 コホンと咳払いしたエリスは俺を睨むとその剣の柄に手を置いた。


「いいか、もし万が一にでも君が学院内のトイレに侵入などしたら、私の契約精霊で君をキノコソテーにしてやるからな。朝日は拝めないものと思え」


「……肝に銘じておこう。しかし、キノコソテーか。エリスは料理が得意なのか?」


「ああ、数少ない趣味でな。いつか理想の殿方と添い遂げたときに存分に手料理を振舞えるように始めたのだ。今では日課になっている」


「ほう、それはさぞかし上手な
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