暁 〜小説投稿サイト〜
くらいくらい電子の森に・・・
第十四章
[10/10]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
だと出られないんじゃないかな」
「うーむ…自転車なら抜けられるか…」
「山道だし、距離も随分ある。女の人には無理だよ」
僕らが額を寄せ合って深刻に相談している時に、背後からけたたましい笑い声が響いた。
「あははははははは!イカみたい、こいつ干しイカみたい!!」
浴衣の乱れも気にせず、のた打ち回って笑っている。どんだけ干しイカが面白いのだ。
「…流迦ちゃん、さっきから何を見てるんだ」
紺野さんが身を乗り出した。
「さっき、そこで自転車で接触事故を起こした奴。病室のライブカメラに映ってるの!」
「ライブカメラ…お前、まだそんなことしてるのか!他人の病室に勝手にカメラ設置しちゃ駄目だと、あれほど言っただろう!」
…天才的頭脳に小学生の分別だ。この人と付き合っていくのは本当に大変だと思う。…でも僕もその干しイカに似ているという被害者が気になり、ディスプレイを覗いてみる。

なにやら黄色がかった不鮮明な画面の中央に、みすぼらしい風体の男が横たわっていた。さして気分が悪そうでもなく、すでに病院食をコメ一粒残さず平らげ、寝そべって漫画を読んでいる。『ラッキー、タダ飯ゲット』くらいにしか思っていない様子だ。
「画質悪いなぁ…この、独特のしなび感が干しイカ的に見えなくもないけど…」
「…わっ!!」
耳元で柚木が大声を出した。驚いて肩をすくめて振り返る。
「なんだよ!」
「干しイカじゃないよ!これ…鬼塚先輩じゃん!!」
「え!?」
干しイカの傍らには、見覚えのある色の自転車部品が数点、転がっていた。

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ