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くらいくらい電子の森に・・・
第十四章
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ない。ただひたすら、魂を抜かれたような顔つきで床を見つめていた。
…なんだか堪らなくなって、紺野さんを押しとどめた。
「少し、放っておいてあげよう」
「…あぁ」
妙な顔をして、紺野さんは手を引いた。さっきまでノーパソと睨み合っていた流迦ちゃんが、ふいと顔を上げた。その唇には、ひどく酷薄な微笑が浮かんでいた。
「うふふふふ…楽しみね。伊佐木はどう動くかしら。あの人たちを切り捨てて、紺野につくのかしらね」
「いや…かばい続けるのもそうだが、切り捨てるのもリスクが大きいぞ。あいつが捨て鉢になれば、会社の内部事情を洗いざらいぶちまけられるからな」
「墓穴だね。策士、策に溺れるっていうやつだ」
「お前も倣わないように気をつけろよ」
紺野さんに釘を刺される。まださっきのことを根に持っているみたいだ。
「分かったよ…でも、こういう流れになったならさ、彼らをかばう旨みを排除しちゃえば、伊佐木はこっちに寝返るんじゃないか?」
「あ、でも待て」
紺野さんが、そっと八幡を振り返る。
「八幡、お前の事は俺達が証言して弁護する。とにかく今は、協力してくれ」
八幡は相変わらず床を見ている。もう、何もかもどうでもいいみたいに。柚木が八幡につかつかと歩み寄り、ぐいっと肩を掴んで顔を持ち上げた。
「私は伊佐木って奴嫌いだけど、あんたの考え方自体は嫌いじゃない」
「柚木…さん」
八幡は、ふいを衝かれて食い入るように柚木の顔を見つめていた。
「本っ当に嫌いだから、こういう事言うの、超不本意なんだけどさ。…伊佐木を守りたいんでしょ、認められたいんじゃなくて」
本当に不本意そうな口調だ。八幡は少し間をおいて、こくんと頷く。
「このままだと最悪、伊佐木は烏崎達の巻き添えになる。守れるのは、烏崎に強要されて実際に動いてた八幡だけなんだよ」
八幡の瞳に、強い光が宿った。
「…私が参ってたら、あの人はますます泥沼を開拓していっちゃいますね」
ひざを抱えていた腕を解いて、すっと立ち上がる。
「あなた達と、行動します」
「そーゆー子だと思った」
柚木が会心の笑みを浮かべて、八幡の頬を軽く叩いた。八幡のほうが年上なのに。横目で観察していた流迦ちゃんが、面白くなさそうに下唇を突き出した。

「…で?烏崎をかばう旨みを排除するにはどうするつもりなのかしら姶良大先生?」
なんか口調が意地悪だ。昔の優しかった流迦ちゃんが脳裏をよぎり、ちょっと涙が出た。
「例えば、MOGMOGの配信を終わらせれば、烏崎をかばう旨みはなくなる…」
「それには、データを開発室に届けないとな。…八幡、行けるか」
「…車のキーは、烏崎さんが持ってます」
「じゃ、俺の車を使え」
「そりゃまずい。多分、検問でひっかかるよ。それにさっきの事故の後始末で道路は封鎖されてるから、駐車場から
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