第十四章
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る吐き気に耐え切れず、ノーパソの前を離れ、吐いた。
こんな耐え難い状況の中で、流迦ちゃんだけが、冷ややかに水中の眼球を見つめていた。
「こうなることは、目に見えていた。…だから、警告したのに」
「…最初から知ってたのか…?」
かろうじて、顔を上げた。
「『リンネ』が異常な状態にあることは知ってた。近寄るとウイルス感染の恐れがあったから、近寄らないようにしていただけ」
「違う、ビアンキの異変だ。…気がついてたのか」
「言ったはずよ、ビアンキは『欠陥プログラム』だと」
僕を哀れむように一瞥すると、再び視線をディスプレイに戻し、ノーパソに手をあてて、ぱたりと折りたたんだ。
僕らが落ち着き、紺野さんが暗がりから出てくるのを待つように、流迦ちゃんの話が始まった。僕らと、先ほどの騒ぎで目を覚ました八幡の前に、淹れなおした珈琲が置かれた。
「紺野の『ハル』や、柚木の『かぼす』は、商品として完成された、模範的プログラム。でも『ビアンキ』や『リンネ』は、少し違う」
「紺野さんから少しだけ聞いた。ハルとビアンキの間には、決定的な違いがあるって」
「MOGMOGには、収集癖を持つものが多い。これにはれっきとした理由がある」
そう言って、珈琲に砂糖の塊を3個沈める。こぽこぽと細かい泡を吐いて、砂糖は溶けた。
「食欲、睡眠欲、性欲…人の脳は、いろいろな欲求を抱えている。その欲求を満たすことで、生命を維持すると同時にストレスを回避するわ」
「でもそれは、体がないと叶えられないね」
「そう…だからMOGMOGの場合、これらの欲求は、もっと浅い欲求にバイパスするの。収集欲や知識欲なんかの、体がなくても実現できる欲求に置き換えることで、均衡を保つ」
すぐにビアンキの変な癖『おやつ巡り』に思い当たった。僕が一緒に巡ってあげると、とても嬉しそうに笑ったものだった。
「…それが、あんたがさっき言ってた『収集癖』?…かぼすには、そんな癖はないわ」
柚木が、怪訝そうに顔を上げた。
「かぼすがMOGMOGとして起動したのは、ついさっきね。いずれ発動するわ」
「ビアンキにも収集癖があった。…ならばどこが、他のMOGMOGと違うんだ」
流迦ちゃんは、一瞬遠い目をした。ずっと昔、流迦ちゃんが14才だったときに、時折見せた表情と同じ。…ずっと昔に忘れ去っていた、古い感情が疼いたような気がした。
「ビアンキとリンネ…あの子たちの欲求は、収集欲の他にもう一つ、親和欲求にもバイパスさせている」
「親和欲求?」
「誰かと一緒にいたいと願う、その人と仲良くなりたいと思う、そういう欲求。…ともすれば弱さにも繋がる、不合理な欲求よ」
冷たく言葉を切り、珈琲を一口飲む。まるで昔の自分を切り捨てるように、冷たく響いた。
「でもこれが成功すれば、高いコミュニケーショ
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