第十四章
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した。
「……ビアンキ…なのか……?」
千切れたヘッドドレスと、虚ろに濁った瞳が、目玉の海から『ぞろり』と這い出てきた。紫色のドレスが現れた時、全身を鳥肌が覆った。
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「腕が…ない…!脚も!!」
『――届かない腕も、脚も要らない』
確かにビアンキの声なのに、何か別のものと重なり合っているような奇妙な音。自分を見ている全ての人間への憎しみが、その無機質な声から溢れ出していた。
「…謝るよ、悪かった。だから、元に戻ってよ…」
声が、震えた。こんな呼びかけが無駄だってことは、分かりきっていた。でも呼びかけずにはいられなかった。
「僕だ、わかるだろ、ビアンキ」
『ご主人さまは、死んだ』
ビアンキの首が、かくん、とおちた。
『死んだ。全身、土の色になって死んだ。手も、足も、体も、もうどこにもない』
目玉を押しのけるように、紅い画像が画面を満たした。…これ、何だ…?紅くて、紅すぎて、なんだかよく分からない。身を乗り出して、画像を凝視した……
「あ…あ……ああぁぁああぁあああ!!」
「きゃあぁああ!!」
ひ、人だ…血に染まった人の肋骨と、切り分けられた腕と…!画面の隅に、生首のようなものも転がっている。頭の中心がずぐん、ずぐんと波打って、今入ってきた情報を拒否する。
…見ていない、僕は、生首の顔を見ていない…!!
「す…杉野――――!!!」
紺野さんの絶叫が、耳朶を打った。
「杉…おまえ、いくら何でもこんな…酷い…死に方…」
よろよろ立ち上がると、紺野さんはボイラーの暗がりに消えた。…やがて、暗がりから低い嗚咽が洩れてきた。柚木は僕の背中に顔を埋めて、泣き崩れた。
『死んだ。透析、出来ずに。死んだ。そして切り分けられた』
間断なく展開されていく画像は、全部紅い。…根元から切断された四肢、生首、ポリ袋に詰められた内臓…そんなものが順繰りに、展開された。…ビアンキ、『そっち』は違う…!戻ってきてくれ、違うんだ!何度も呼びかけた。カメラに、必死に呼びかけた。…でも切り刻まれた遺体の画像は、とめどなく展開し続けた。…やがて、生首から眼球がくりぬかれる情景が、連続写真のように表示された。スプーンが眼窩にめりこんでいく…ずぶり…ずぶり…ずぶ…赤黒い血が、どぷりと噴き出す。太い男の指が、刺さったスプーンをごりごり動かす。眼窩が歪む。やがて、視神経をまとわりつかせた紅い眼球が転がり落ちた。惨すぎて、感情が追いついてこない。……これは…悪夢か……?
「…い…いやぁ…!」
「…やめろ…なにやってんだ…やめろよ…ビアンキ!駄目だ、その画像をしまえ!!」
『目、だけが、残った』
「…うあぁあぁあああああ!!!」
くりぬかれ、硝子の筒に収められた二つの眼球は、血の色に濁って透明な水の中を漂っていた。こみ上げてく
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