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くらいくらい電子の森に・・・
第十四章
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ずさを察したのか、流迦ちゃんがにじり寄って来た。…紺野さんは渋い面持ちで珈琲をすすりながらも、先刻の緊縛画像をあらためている。…相当、集中しているようだ。八幡は、まだ気絶している。
「…仲直りしちゃったんだ。つまんなーいの」
「もう、何なの!まぜっかえすつもり!?」
柚木が声を荒げた。…やめてくれ、今そういう空気になると困るんだよ…。紺野さんの方をちらっと見る。まだ、緊縛画像にぞっこんのようだ。
「私がどこから見てたか、教えてあげようか」
柚木を無視して、僕の目を覗き込んできた。頭がくらっとする気配を感じて、ふいと目をそらす。
「もう催眠術とか無駄だから。…窓から、見たんだろ」
「ヒント。…私、ぜーんぶ聞いたんだよ。姶良の言葉も、柚木のも。一つ残らず、大声で読み上げてあげようか」
「ちょっ…こいつ!!」
柚木が流迦ちゃんの両頬をむにー、と引っ張る。
「あひらー、ふひー」
「…これ以上喋ると、こうだよ、こう!!」
耳まで真っ赤になった柚木に引っ張られ、流迦ちゃんの頬はますます横に伸びる。流迦ちゃんも抵抗をしない。状況を楽しんでいるのか。
「もふいっはい、いっへー」
「もー!黙れ、こいつー!!」
もうこれ以上伸びないんじゃないかというほど、両頬が横に伸びた。それでも手元のキューブは、間断なく回転して記号めいた模様を作っては消していく。
「柚木、ちぎれちゃうから。…降参、どこから見てたの」
「あなたの、ノーパソの中」
「えっ!?」
そんな至近距離から!?さぁ…と嫌な汗が流れた。
「…それ、ほぼ、全部じゃん…!」
「うん、全部。…ビアンキも、同じものを見てた」
嫌な予感が、腹の中に渦巻いた。胸の中を赤黒いもやが満たすようなあの感じ。…やばい、やばい、やばい、絶対に、取り返しの付かないことが起こってる。
「ノーパソは…!」
「電源、落ちてるみたいね」
流迦ちゃんから半ばひったくるようにして電源を入れる。…認証してくれ、たのむ、認証してくれよ……!
気の遠くなるような読み込み時間を経て、認証画面に切り替わった。異様な雰囲気を嗅ぎつけた紺野さんが、僕の真横に滑り込んできた。…認証完了、画面が切り替わった…
「うっ……わぁああああぁぁああ!!」
思わず、ノーパソを放り出して後じさった。僕の薄暗い液晶画面が映し出していたのは、微笑むビアンキでも、不機嫌なビアンキでもなかった。

そこに映っていたのは、目玉。

何百、何千の目玉。

見間違いようがない、僕の目玉だ。僕の目玉がひたすら、液晶を埋め尽くしていた。
「なっなんだこれ…」
「認証のバグか!?」
紺野さんが僕を押しのけ、なにか色々なキーを押すが、まったく反応しない。ただふよふよ漂う、僕の目玉だけだ。やがてそれらを掻き分けるようにして『何か』が顔を出
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