第一幕その二
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
すよ」
「御主人様が」
「はい、すぐに来て下さい」
「わかりました。では」
彼はそれを受けてムスタファのところにやって来た。そして頭を垂れる。
「御呼び頂き有り難うございます」
「うむ、リンドーロよ」
彼は仕事を済ませた従者に褒美を与えながら彼に応えていた。
「そなたを呼んだのは他でもない」
「はい」
「そなた、まだ妻がおらんかったな」
「左様ですが」
「それでじゃ」
ここでちらりとエルヴィーラの方を見た。
「妻が欲しくはないか?」
「結婚ですか」
「うむ、その際はそなたは奴隷ではなくなる」
口髭をこれでもかという程反らせながら言った。
「解放して頂けるのですか」
「悪い話ではないだろう」
「は、はい」
幾ら扱いが良くても奴隷は奴隷だ。それから解放されることが嬉しくない筈がない。
「是非とも」
「で、好みはどうじゃ?」
「好みですか」
「うむ」
ムスタファはまたエルヴィーラを見た。何処か好きな女の子に意地悪をする男の子の様な目である。
「美女か。お金持ちか?」
「私の好みは」
「優しい女か?可憐な女か?もっとも全てを兼ね備えている女は」
またエルヴィーラを横目で見た。
「わしも一人しか知らぬがな」
「私もそれは同じです」
「ほう」
ムスタファはそれを聞いて面白そうに声をあげた。
「知っておるのじゃな」
「そうです、真面目で親切で」
「うむ」
「二つの瞳は明るく」
「よきかな、よきかな」
「髪は黒く」
「よいのう」
それを聞いてさらに機嫌をよくさせる。
「頬は赤く」
「さらによい」
ムスタファはリンドーロの話を聞いて何故かエルヴィーラのことを考える。またしても妻の方を見るのだ。
「可愛らしい顔立ちで」
「ううむ」
だがそれには納得いかないようである。
「彫刻の様に美しいのではなくか?」
「それが私の理想の女性であります」
リンドーロは頭を垂れて答えた。
「左様か」
「はい」
「まあよい。恋はよいものじゃ」
ムスタファは語る。
「美女に金、何よりも生涯の伴侶を得る幸福、いいものじゃぞ」
「全くです」
「では楽しみにしておれ」
「わかりました」
「すぐにそなたは幸福になるからな」
そこまで言って彼はその場を下がった。そして廊下を進む。その途中ハーリーが彼に声をかけてきた。
「あの、まさか」
「確かにあ奴は奴隷から解放してやる」
「では」
「しかしな」
ムスタファは言う。
「わしの考えはわかっておろう」
「それでは」
「わしの妻は一人だけじゃ」
強い言葉であった。
「よいな」
「わかりました。けど」
「何じゃ?」
「奥方様は」
「言葉は二回までは取り消せるのじゃ」
ムスタファはしれ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ