参ノ巻
守るべきもの
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由良も戸惑いながら、あたしに一礼すると出て行った。あとを追うように速穂児も立ち上がり障子に手をかける。
「ちょ、あんた高彬の言うこと聞くの!?」
「俺は高彬殿の従者らしいからな。主の命には従うものだ」
速穂児は心底楽しそうに笑いながら、歩みを止めるとあたしに顔だけ向けた。
そしてふいに笑いを納めると、言った。
「いいのか、瑠螺蔚」
光を背にした速穂児の顔は強張っているようで、なぜか不安そうで、頼りない若児のように見えた。
「…あんたは行くところがないと言った。ここで、できるだけやってみるといいわ。高彬も言っていたけれど、佐々家では色眼鏡で判断されない。前田のように甘くもない。多分最初は疑われて過ごすと思う。それはもしかしたら、辛いことかもしれない。名を捨てたというのなら、零からただの速穂児として、自分で生きていくといいと思ったのよ。でも、あんたがそれを拒絶するなら、あたしは止めない。選ぶのはあんたよ。あたしは強制しない。初めて自分の足で歩き出したとあんたは言った。行きたいなら、どこへでも好きなところへ行くといい」
速穂児はじっと黙ってあたしの言うことを聞いていた。
偉そうだったかなと少し恥ずかしくなって、あたしはつんと顎をあげた。
「それに!あんたまた放っておくと死ぬだの自分の命がなんだの物騒なこと言い出しかねないしね!」
速穂児は、それを聞いて密かに笑った。
「違いない」
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