参ノ巻
守るべきもの
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見た。
あたしはのんびりと答えた。
「あんたの従者」
速穂児と由良が、はっとしたようにあたしを見た。
「僕の、従者?」
高彬は鋭い目で速穂児を見た。それはつい先刻までの妹に甘い兄の顔ではなく、害意のある相手かを探る武の目だった。
高彬の左手が腰に伸びる。あたしはその手を押さえて高彬をのぞき込んだ。
「高彬の従者にするために拾ってきた、そうよね、由良?」
「えっ、あ、は、はい。ですが、瑠螺蔚さまは、そのう…」
あたしが速穂児に対して冷たかったのを知っている由良は戸惑って口ごもった。
「どういうことだ、由良」
「どういうことも、そういうことよ。これから、よろしくね!」
あたしは強引にまとめると高彬の手をぎゅっと握った。
「瑠螺蔚さん…」
少しの間、高彬はあたしの瞳の中の真意を探っていたけれど、結局諦めたようにため息をついた。
「おまえ」
驚いたようにあたしをみていた速穂児は、呼ばれてそのまま高彬を見た。
「僕は瑠螺蔚さん程甘くないし、情にも絆されたりなどしない。瑠螺蔚さんに免じてとりあえずはここにいてもいいが、そのあとは、おまえ次第だ」
「…御意」
速穂児は頭を垂れた。
「そもそも、おまえ瑠螺蔚さんとどういう関係だ?」
速穂児は無言であたしを見た。
関係?関係、いやどういう関係なんて…。
「え?あー、えーと、友達」
「友達?」
高彬が呆れたように繰り返した。
その時、ふ、と笑い声が聞こえた。速穂児だった。
「友達、か。そういうことだ、高彬どの」
「そうそう友達友達!もういいでしょ?話もまとまったことだし、あんたたち、帰った帰った!あたしたち、大事な話してたんだからね」
あたしは話は済んだとばかりにしっしと手を振った。
「瑠螺蔚さん」
高彬がにこりと笑った。
あ、なんか少し不機嫌?長年のつきあいであたしは素早く察知すると、身構えた。
「なに?」
「僕の従者を、僕が連れて行っても問題はないね?」
「え?いやでも…話が…」
「おまえ名は何という」
「速穂児と」
「では速穂児、来い」
高彬はさっさと部屋を出て行った。
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