第69話 騎士の涙、少女の叫び
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事せんでええんや!」
はやての必死の説得が続いた。未だに涙を流し自分自身の存在に苦しむシグナムに必死に叫んでいるのだ。そのはやての声が、心の叫びがシグナムの奥深くに封印されていた本当の心に響いていく。更にレヴァンティンの切っ先がぶれだしていく。後少し、あと少しで―――
【何をしている、シグナム? 早くそいつ等を殺せ! キングストーンを奪え!】
「ぐ! うあああああぁぁぁぁぁぁ!」
突如、シグナムが頭を抱えだす。口からは悲痛の叫びが木霊していた。突然の変化であった。一体何が起こったと言うのだろうか。そして、悲痛の叫びが納まると、其処に居たのは明らかに狂気の目つきに変わったシグナムが居た。
「シ、シグナム!」
「コロス……オマエタチヲ……コロス!」
明らかに口調が変わっていた。正気を失っていた今のシグナムにはやての言葉など最早届かなかった。只、無情にも手に持ったレヴァンティンが高々と頭上へと振り上げられる。
「は、はやてちゃん、逃げろ! 今のシグナムさんは正気じゃない!」
「はやてちゃん、逃げて!」
「嫌や、此処で逃げたら、シグナムを救う事なんて一生出来へん! 私はシグナム達の主なんや! こないな所で逃げられへん!」
強情なまでにはやてはその場で立っていた。そしてシグナムを見つめている。そんなはやてにシグナムが容赦なく剣を振り下ろしてくる。今度は一切の容赦がない。すん止めも有り得ない。正しく絶対絶命の時であった。
「待てぇぇい!」
突如、怒号が響いた。それは天空より響くような声であった。そして、その声にはなのはもフェイトも聞き覚えがあった。
「い、今の声は? ってか、一体何処から?」
一同は声の主を探す。だが、辺りにそれらしき人影はない。そんな時、淡々と声の主の語り部が始められた。
【心と心で繋がった者達は見えない糸で繋がっている。
その糸は、どんなに鋭い刃をもってしても、決して切れる事はない。
堅く結ばれた人と人を結ぶ見えない糸
人、それを『絆』と言う】
それは、一つの句であった。まるで今の心境を述べるかの様な言い回しだ。そして、天高く昇る太陽を背に、その者は立っていた。赤と青と銀の鎧に身を包みその眼光は鋭く悪を決して許さない正義の闘志に燃える青年であった。
「やっぱり、ロムさん!」
「え、ロムさん?」
なのはが名を叫んだ。幾度となく窮地を救ってくれたクロノスの戦士だ。
「烈火の将シグナム! 今度は俺が相手だ!」
「グ、グウウアアアアア!」
最早正気を失った獣の雄叫びであった。それを挙げながらシグナムは青年、ロム・ストールへと向っていく。それに対しロムは天空から両刃の剣、剣狼を呼び出しそれを手に向い立つ。
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