第69話 騎士の涙、少女の叫び
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ライダーが両手でそれを退けようとするが先ほどのダメージが蓄積しているせいか、それともシグナム自身の力が以前よりも遥かに勝っているせいか全く足が動かない。
レヴァンティンの切っ先が日の光に当たきらびやかに輝いた。そしてその切っ先が頭上へと持ち上がる。これからあれを一気に振り下ろし首を跳ねようと言うのだ。
「止めるんや、シグナム!」
シグナムの背後から声がした。振り返ると其処にははやてが立っていた。涙で滲んだ目をしながらもその目はしっかりとシグナムを見ていた。
だが、今のシグナムにそんな目を向けても何も感じない。既にはやては主ではないのだ。
「また貴様か? 私の名をそう容易く言うとは……相等の覚悟があっての事だろうな?」
レヴァンティンの切っ先をはやてに向けて言い放つ。今までのシグナムであれば絶対にそんな事はしなかった。だが、今のシグナムは行う。
心ここにあらず。その言葉が一番今のシグナムに似合う。
「シグナム、お願いや! 昔のシグナムに戻ってぇな!」
「何を訳の分からない事を? 私は今でも正常だ。貴様の方が異常なのだろうが!」
「そないな事ない! シグナムは……シグナムは私の家族やった筈や!」
「我等に家族など……ない!」
ハッキリとそう切り捨て、はやて目掛けて容赦ない一撃を放ってきた。はやてを切り殺す為に放たれた無情の一撃だ。だが、はやては逃げない。例え後ろでなのはが叫んでも。光太郎が逃げろと叫んでも、はやては逃げない。
只、じっとシグナムを見据えたまま立っていたのだ。無論そんなはやてに容赦などする筈がなく、シグナムがそのままレヴァンティンを振り下ろしていく。其処にあるのははやての細く弱弱しい首である。シグナムの腕力とレヴァンティンの切れ味を以ってすれば容易く切断出来る。
はやての丁度真横辺りでレヴァンティンの切っ先が止まった。そして其処から微動だにせずプルプルと震えている。
はやてはシグナムを見た。そのシグナムの目からは涙が零れ落ちていた。目は未だに殺意の篭った目をしているのにその目から涙が止め処なく流れているのだ。
「シ、シグナム……」
「な、何故だ? 貴様を倒せとの次期創世王の命令なのに……何故こうも、心が痛いんだ? 何故―――」
シグナムが泣いていた。シグナムの心が泣いているのだ。例え心を支配されゴルゴムの手先になったとしても、心の奥底にある本当の心は否定しているのだ。
だが、強大なるシャドームーンの呪縛がそれを妨げている。
「シグナム! 目を覚ますんや! 信彦兄ちゃんの……シャドームーンの呪縛に負けちゃ駄目や!」
「わ、私は……私は、次期創世王シャドームーン様を守る……」
「違う! シグナムは私の大事な家族や! 騎士だとか守護だとかそないな堅苦しい
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