第一話〜幼き日々の英雄2人〜
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江が朱家に引き取られてから3年の月日が流れた。
最初のうちは義母である焔にしか心を開いていなかったが、3年という時間がその問題を解決してくれた。
この3年間、江は主に内政・軍略を学んでいた。それは江の武の実力が既に桃蓮に迫るものがあったこともあるが、第一の目的は江を戦場から遠ざけることであった。
江は育ちの環境のせいもあって、幼いころから人を殺め続けてきた。
当時は感情を押し殺すことで何とか心の均衡を保っていたが、ようやく感情が表に出始めた今になって再び戦場に身を投じさせてしまうと、今度こそ心が壊れてしまうかもしれない。
この乱世、いずれは再び戦場に赴くとしても、今は知識に磨きをかけ、そして心を鍛えるのが上策と判断されたのだ。
結果としてこの教育方針は良い方向へと転んだ。
賊という縛られない環境で育ったが故か、江は内政においても軍略においても他にはない柔軟な発想を持っていた。
無論、まだ経験がないので理想に偏ったところもあったが、それを現実的な方策に改善することも十分可能なものだった。
保護されてから2年経った12歳の時に仕事に就き、瞬く間に自らの才を開花させ、また江の武術の才を知っている者は桃蓮、祭、焔の3人だけということもあり、周りからはいつしか江は文官として知られるようになっていた。
そんなある日江は桃蓮の呼び出しを受け、宮城へと出向いていた。
そこには2人の少女を連れた桃蓮が立っていた。桃蓮は江の姿を確認すると口を開く。
「よく来たな。今日はお前に引き合わせたい奴がいる」
そういって2人の少女を前に押し出す。
一方は紫がかった桃色の髪をした桃蓮の面影を持つ少女、そしてもう一方は艶のある真っ黒で長い髪を腰の辺りまで伸ばした少女。
「ほら、二人とも自己紹介しな」
桃蓮が2人に促すと、まずは桃蓮似の少女が声を上げた。
「孫策、字は伯符よ。朱才、あなたのことは母様から聞いてるわ。よろしく」
屈託のない年相応の笑顔を向けて、江に向かって手を差し出す。
江はその手を握り握手を交わす。
「姓は周、名は瑜、字は公瑾だ。よろしく頼む」
それに呼応して横にいた黒髪の少女も自己紹介を済ませる。
しかしこちらの少女は孫策とは対照的で、見定めるかのようにじっと江の眼を見つめている。そこから感じ取れるのは警戒心というよりも好奇心が主だった。
「よろしくお願いしますね。周瑜殿」
そんな周瑜に江は柔らかな笑顔で手を差し出す。
その行為に周瑜ははっとすると顔を真っ赤にして俯きながら、江の手を取る。
「…すまない。つい興味が湧いてしまって」
「お気になさらないでください。好奇の視線を向けられるのは慣れていますので」
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