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スーパーヒーロー戦記
第60話 影の月
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だ。

「お役目ご苦労だったな。ビルゲニアよ」
「き、貴様……シャドームーン!」
「サタンサーベルは本来私の為に用意された剣。貴様如きに使いこなせる筈がない」
「だ、黙れ! 黙れ黙れ黙れぇぇぇ! それは俺の剣だ! 俺こそが、次期創世王なんだぁぁぁぁぁ!」

 狂気に満ちた叫びをあげながら、ビルゲニアはシャドームーンに向って飛び掛った。だが、そんな彼に浴びせられたのは、無情なまでに冷たい一撃であった。

「がはっ!」

 斜め一文字に斬られた傷跡からどす黒い血液らしき液体が流れ落ちる。その背後には、斬った張本人であろうシャドームーンが立っていた。

「お、俺は……利用されただけだったのか……創世王……よ」
「フン、所詮キングストーンを持たない貴様如きに、創世王の資格はない」

 吐き捨てるように言い放った後、シャドームーンの無情な一撃がビルゲニアの首を切り飛ばした。クルクルと宙をビルゲニアの首が舞い地面に転がる。その顔には狂気と憎しみが込められていた。
 そして、その胴体は力なくその場に倒れ、やがて消え去ってしまった。
 ビルゲニアを倒した後、シャドームーンはライダーブラックを見た。

「まさか……お前は?」
「南光太郎。嫌、仮面ライダーBLACK。私は次期創世王候補シャドームーン」
「シャドー……ムーン」
「今この場でビルゲニアは葬った。今日よりゴルゴムの指揮は私がとる。いずれ、貴様とは雌雄を決する日が来る。その日を、楽しみにしているが良い」

 それだけを言い、シャドームーンは歩き去ろうとした。

「待ってな、信彦兄ちゃん!」
「むっ!」

 だが、そんなシャドームーンをはやてが呼び止めた。

「娘よ、信彦と言う男は既に死んだ。今の俺は世紀王シャドームーンだ」
「そないな事ない! あんたは信彦兄ちゃんや! 私の知ってる、優しくてちょっとだけ意地悪な信彦兄ちゃんの筈や!」
「そうだ、信彦!」

 今度は光太郎が叫んだ。

「目を覚ましてくれ、信彦! お前はゴルゴムに操られているだけなんだ!」
「……いずれ貴様等のキングストーンは私が頂く。それまで、せいぜい生き延びている事だな」
「信彦兄ちゃん!」

 その言葉を最後に、シャドームーンは忽然と姿を消してしまった。もう、目の前にシャドームーンは、そして、秋月信彦は何処にも居ない。

「信彦兄ちゃん……あれは間違いなく信彦兄ちゃんや」
「あぁ、信彦……遂に目覚めたのか。俺は、俺は信彦を絶対に救ってみせる!」

 堅く拳を握り締め、仮面ライダーBLACKこと、南光太郎は誓った。
 だが、それはまた、二人の悲しき戦士の戦いを意味していたのであった。
 そして、そんな中、その戦いを密かに見守る者も、また存在していた。


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