暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝
第百十七話 鬼左近その五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それでも虎之助や市松達はそうはいくまい」
「だからですな」
「あの者のそうしたところは」
「厄介じゃ。下手に敵を作ってしまう」 
 信長が懸念しているのはこのことだった。
「そしてそれが家の亀裂になってしまうからのう」
「ではどうされますか」
 信広はじっとした顔で兄に問うた。
「ここは」
「うむ、亀裂はあってはならぬ」
 信長はこの考えから述べた。
「決してな」
「注意すべきあれですな」
 丹羽は決意を見せた信長にこう述べた。
「時をかけても確実に」
「ことを収めることじゃな」
「それが大事ですな」
「その通りじゃ。しかし時はかけぬ」
 信長はそれは大丈夫だというのだ。
「既にな」
「左様ですか」
「うむ、わしの考え通りいけばな」
「してそれはどういったものでしょうか」
「まずは兵を集める」
 ここからだった。
「そして兵達を鍛錬させる」
「そうされるのですか」
「うむ、それにじゃ」
 まだあった。
「政でじゃが」
「政においてもですか」
「考えておる。手はな」
「ではそうされて」
「ひびは消す」
 何としてもだというのだ。そうした話をしてだった。 
 信長は家臣達、石田と加藤達の亀裂を収めることにした。このこともまた織田家にとっては重要なことだった。
 織田家の家臣の数は多くなりそこでも充実していた、だが信長はこのことにも決して満足してはいなかったのだ。
 だからこそこうも言うのだった。
「まだまだじゃな」
「人が足りませぬか」
「うむ、数が足りぬ」 
 信広に話す。
「まだな」
「織田家は他家に比べて遥かに大きくなってもですな」
「天下を治めるのじゃ」
 信長が見ているのはやはりこのことだった。
「だからこそじゃ」
「まだですか」
「うむ、まだ人が欲しいのう」
 こう言うのだった。
「とはいっても焦りはせぬがな」
「それはありませぬか」
「焦りは」
「焦っても何もならぬ」
 このこともまたよくわかっている信長だった。
「だが。他の家の者達じゃが」
「武田や上杉といったですか」
「あの家の者達ですか」
「うむ、ああした家の者達もやがては加える」
 織田家に組み入れるというのだ。
「武田二十四将も上杉に十五将もな」
「そのどちらもですか」
「織田家に加えられますか」
「天下を統一するなら当然のことじゃ」
「まさか殿、それは」
 丹羽は信長の話を聞いてからあることに気付いた。
 そしてその気付いたことを信長自身に問うた。
「武田家を家ごとですか」
「そうじゃ、組み入れる」
 まさにそうするというのだ。信長自身もこう答える。
「家ごとな」
「また大きいですな」
「わしは武田も上杉も滅ぼすつもりはない」
 天下を統一
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ