第百十七話 鬼左近その四
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それを見て言うのだった。
「御主はそうしたものに興味はないか」
「そして地位だの名声だのにもな」
やはり関心がないというのだ。
「どうでもよい」
「だからそれだけ分けられるのか」
それに加えてだった。
「しかも左近殿は御主の家臣でもないというのに」
「織田家の直臣じゃ」
この身分だった、石田にとっては損ばかりだ、だがそれでも彼はそれでよいというのである。
小西はその石田に対してあらためて言った。
「無欲じゃな。しかし」
「しかし。何じゃ」
「その無欲さがよい」
小西は顰めさせた顔を上げた、その顔は晴れやかなものになっていた。
そしてその顔で石田に対してこう言ったのである。
「わしは御主に惚れたぞ」
「だからというか」
「わしは御主の友になる、そうなってよいか」
「わしはそうした申し出は断らぬ」
友になりたいといった申し出には絶対に首を縦に振るというのだ、これもまた石田の考えの根幹である。
「決してな」
「では今よりじゃな」
「わし等は友じゃな」
「そうなったな、ではな」
二人は笑みを浮かべ合って話した、石田はこの時点ではかなり損をしている様に思われた、しかしここでだった。
信長はこの件について丹羽、そして彼の弟の一人である信広を前にしてこう言ったのだった。
「佐吉のことじゃが」
石田の幼名を出してからだった。
「ああして己の石高の半分を出して左近を出仕させたがのう」
「確かに見事です」
それは丹羽も言う。
「ああしたことは滅多にできませぬ」
「その通りじゃな」
「しかし己の石高の半分を出すというのは」
「無理が過ぎるのう」
「欲がない佐吉だからこそできますが」
「己の家臣として召抱えるにしても無理がある」
領地がどれだけ大事かを知る信長ならではの言葉だ。
「非常にな」
「左様ですな。ではここはどうされますか」
「左近には確かに佐吉の半分の石高でよい」
まずは島のことを話した。
「しかし佐吉はそのままじゃ」
「半分を出さずともよいと」
「うむ、千石なら千石じゃ。佐吉は左近に与えることはない」」
「そして左近もですな」
「佐吉が千石なら五百石じゃ」
そうなるというのだ。
「これでどうじゃ」
「それでよいかと」
丹羽が答えた。
「それがしはそれでよいと思います」
「三郎五郎はどう思うか」
信長は今度は弟に対して問うた。
「これでよいか」
「はい、それがしもそれでいいと思います」
信広もこう答える。
「佐吉は既にその心意気を出しました故」
「これでよいな」
「もう充分かと」
「あ奴、見事じゃ」
信長は確かな顔になっていた、そのうえでの言葉だった。
「領地や地位に関心がないとはな」
「だからこそこう
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