第百十七話 鬼左近その三
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「それなりのものを貰わなくてはな」
「では半分でどうじゃ」
石田は笑って島にこう言った。
「半分でどうじゃ」
「半分か」
「わしはこれから織田家で才を認めて頂く」
「それ相応のものを貰う様になるというのじゃな」
「その通りじゃ、わしが貰う分の半分でどうじゃ」
「御主は今どれだけ貰っておる」
島は今の石田の禄を尋ねた。
「織田家に仕えてすぐじゃが」
「五百石じゃ」
石田はすぐに答えた、
「ここからはじまる」
「ふむ、五百か」
「仕えてすぐの者には破格じゃな」
「それはその通りじゃな」
島もこの常識はわかる。信長は才があると見た相手にはすぐにそれだけ出しそこからも見て出す男なのだ。
それで石田も五百石だった、即ちだった。
「二百五十石か」
「不服か」
「御主がさらに才を認められればか」
「さらに増える、どうじゃ」
石田は島のその目を見て言った。
「これでどうじゃ」
「織田家から直接だと三百八十万石じゃがな」
「それだけいきなり貰っても嬉しいか」
「ははは、わらしべ長者でもそうはいかん」
笑って御伽草子のことを言う島だった。この時代でもう伝わっていたのだ。
「いきなりそれだと夢かと思ってしまうわ」
「そういうことじゃな」
「うむ、徐々にいってだと納得出来る」
島にしてもそれでこそだった。
「安心して話を聞くことができる」
「では最初は二百五十石でよいな」
「御主が認めてもらえればじゃな」
「わしが認められぬと思うか」
「それはないな」
島もすぐに答えた。
「御主の場合はな」
「それだけの自信はあるつもりじゃ」
「そうか。では御主が千石になれば」
「御主は五百石じゃ。それでよいか」
「わしもそれに見合うだけのものは見せるぞ」
つまり働くというのだ。石高に相応しいだけの。
「それを見せるからな」
「ではよいな」
「うむ、これよりわしは織田家の家臣じゃ」
島は大胆さを思わせる笑みで応えた。かくして彼は織田家の家臣の一人にその名を連ねることになったのだった。
このことには流石に誰もが驚いた。小西は石田のところに来て驚きを隠せない顔で彼に対して問うた。
「御主、また凄いことをしたのう」
「左近殿を織田家に迎え入れたことか」
「そうじゃ。迎え入れるやり方は聞いたが」
自身の石高の半分でどうかという話は小西も聞いて知っていた。だがそれでもだったのだ。
「しかしそれでもじゃ」
「いや、石高の半分と聞いたからじゃ」
「それでというのか」
「それで出してみたがのう」
「しかしそれでよいのか」
小西はここで石田に言った。
「御主が五百石ならそのうちの二百五十石を左近殿に渡すことになるのじゃぞ」
「そうじゃな」
「御主はその石高を分け合う
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