第二十二話 雪男の一家その四
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ふつうのおうどんより売れてるかな」
「そんなに売れてるのね」
「きし麺って美味しいから」
細かい理由は不要だった、売れる理由はそれで充分だった。
「だから売れるのよ」
「理由はそこね」
「美味しいものは売れるの」
愛実はマカロニを食べながら聖花に語る。
「詳しい理由は抜きでね」
「そうね。美味ィしいものは売れるわね」
「そろそろお素麺もはじめるし」
今度は夏季限定メニューだった。
「それも売れるのよね」
「そっちのお店も夏忙しそうね」
「忙しいのはいいことよ。本当にね」
「同感ね」
二人で笑顔で話しながら家庭科のマカロニを食べたのだった。それが終わってから男子にも振舞うとクラスの中は。
授業で入って来た先生は苦笑いになってこう言うのだった。
「ちょっと、これはね」
「大蒜臭いですか?クラスの中」
「やっぱり」
「家庭科の授業でかなり使ったわね」
先生もその原因を察して言う。
「それでよね」
「はい、かなり使いました」
「もうこれでもかっていう位に」
女子が笑顔で先生に答える。
「マカロニに使いましたんで」
「もうそれぞれ何個も」
「そうよね。大蒜って身体にいいけれどね」
先生もその辺りの事情はわかっていた、だがだった。
その独特の匂いには困ってこう言うのだった。
「匂いがね。自分も食べない限りは」
「じゃあお昼パエリアどうですか?」
「それかスパゲティか」
「焼肉定食とか」
「キムチラーメンもありますけれど」
「パエリアにするわ」
先生が選んだのはこちらだった。
「そっちにね」
「スパゲティじゃなくてですか」
「そっちですか」
「ドミンゴ先生と一緒にね」
先生はここでこの名前を出した。
「食べるわ」
「八条大学の先生とですか?」
「スペイン語学科の」
「丁度大学の方に用事があってね」
それでその人と一緒に食事を採るというのだ。
「そうするわ。あっちの食堂でね」
「ドミンゴ先生って格好いいですしね」
女子の一人が笑って独身の先生に言った。
「もう如何にもラテンって顔で」
「あら、そうきたのね」
「けれぞ失際に格好いいですよね」
「まあね。ドミンゴって名前のせいかも知れないけれど」
ドミンゴといって最も有名な人物といえばやはりこの人物だった、それは誰かというと。
「プラシド=ドミンゴのね」
「あのテノール歌手の?」
「あの人ですよね」
「そう、あの人ね」
三大テノールのこの人物の名前が笑顔で出される。
「あの人そっくりだし」
「兄弟じゃないですよね。実際」
「そうじゃないですよね」
「多分ね」
先生の返事は今一つはっきりしないものだった。とにかくその人とプラシド=ドミンゴがあまりにも似ているからだ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ