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アルジェのイタリア女
第二幕その三
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いわ)
(上手い具合ね)
 ズルマも。二人は顔を見合わせて笑っていた。
「どうしたのじゃ?」
「御后様が来られました」
「呼んだ覚えはないぞ」
「この部屋に忘れ物らしくて。それでこちらに」
「そうだったのか」
「これこそアッラーの思し召しですわね」
 イザベッラはにこりと笑ってムスタファに言った。
「さあ御后様」
「はい」
「確かに」
 それはエルヴィーラの声であった。ムスタファは彼女が来たことを確信せざるを得なかった。
 丁度そこへリンドーロもやって来た。部屋の中の只ならぬ様子に彼もすぐに気付いた。
「あの」
 そしてタッデオに囁いた。
「どうしたんですか、一体」
「実はイザベッラがな」
 彼は説明する。
「何か妙なことを言い出してな」
「妙なことを」
「そうじゃ。旦那様に御妃様に対して親切にされるようにと」
「そんなことを言っても」
 リンドーロにもムスタファの本心はわかっていた。
「旦那様はどう見ても」
「それでもな」
 タッデオはリンドーロに囁く。
「それをあえて言っているようなのじゃ」
「どうして」
「さてな、何か考えがあるのは確かじゃな」
 彼は言う。
「とりあえずはそれを見極めないとな。よいな」
「はい」
 リンドーロは頷いた。そしてまずはイザベッラの動きを見守ることにした。
 部屋の中心にはムスタファとイザベッラがいる。その周りに他の者達がいる。リンドーロとタッデオ、エルヴィーラとズルマもまた。彼等はイザベッラが何を言うのかじっと見守っていたのであった。
「では旦那様」
 まずはイザベッラが口を開いた。
「ここは寛容に」
「何をせよというのだ?」
「ですから御后様を慰められては」
「悪くはないな」
 まずは頷いてみせた。
「しかしだ」
「しかし?」
「今はまだだ」
「何故ですの?」
「気が乗らぬのだ。ではまたな」
「何処へ」
「一人で休みたいだけじゃ。来る必要はないぞ」
 そう言って一人部屋を後にした。そしてその場には一同が残った。
「御后様」
 その中でズルマはそっとエルヴィーラに添ってきた。静かに囁きかける。
「御心配なく」
「御心配なくって言われても」
「もうすぐですからね。御気が晴れるのは」
「だといいけれど」
「まあそんなふうに御気を落とされずに。宜しいですね」
「貴女がそう言うのなら」
 ここはズルマを信じることにした。まだ憂いのある顔であるが頷くことにした。イザベッラはそれを見ながら自分はリンドーロとタッデオのところにやって来た。
「私に考えがあるのだけれど」
「それは一体」
「いい?」
 そして二人に囁く。話は次の幕に移ろうとしていた。

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