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戦国御伽草子
参ノ巻
守るべきもの

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際、落馬しておけがを負われてしまって、その際この村雨に立ち寄られたのです」



「いや、わしは」



「そうなのですね。父上は、村雨の御内室から見てどのような人でした?わたしは、家にいる父上しか知らないので…差し支えなければ、聞かせて頂けませんか。」



 あたしは父上を遮り、言葉を選びながら言った。



「忠宗さまは…とても…素敵な方で…優しくて…ええ、そう夫を亡くしたわたしにとても優しくしてくださって…」



なぜかそこで村雨の奥方はぼんやりと口を閉ざしてしまった。



「どうかなさいましたか?」



「…いえ、としをとるのは嫌ですね、わたし、忠宗さまのお顔、素敵すぎてよく思い出せないような」



 素敵すぎて、思い出せない?家を捨てる程好きな人の顔が?



 その場限りで誤魔化しているようには、みえない。



「その相手ってこんな顔じゃありませんでした?潰れたタヌキみたいな。ほらほら」



「ぐええ瑠螺蔚なにを〜」



 あたしは父上の顔をぐいと引っ張ると、村雨の奥方の方にずいと押した。



 奥方は心なしか身を引くと首を振った。



「いえ、忠宗さまは、少なくとももっとお顔周りはすっきりとしていて、瞳も大きく、年ももっと下だった、ような…」



「そうですか。つまりもっと美男子ですね」



 あたしはぽいと父上を放り出した。父上の恨みがましい目つきはいつものことなので、さらりと受け流す。



「それと、もうひとつ。父はいつからここにきていませんか」



「そういえば…もう、4月はたっている、ような…」



 薄ぼんやりとした村雨の奥方の答えを、あたしは頷いて聞いた。



「お騒がせしました。そろそろお暇いたします」



 あたしが立ち上がると同時に、速穂児も立ち上がった。



「速穂…」



 村雨の内室が引き留めるように速穂児を見る。



「あたし、父上だけ先に帰してくる。あんた、奥方と話したいことあるでしょう」



 あたしは小さな声で速穂児にだけ聞こえるように言った。



「話したいことなど、なにもない」



「いいから、ここで待ってて」



 あたしは村雨の内室に頭を下げた。



「御前失礼します。いくわよ、おじさん!」



「おじ…!?」



 あたしは父上を引っ張って速穂児が教えてくれた村雨家の抜け道を出た。



「瑠螺蔚なんだったのだ、まったく。わしは村雨の未
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