参ノ巻
守るべきもの
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「はぁ?」
あたしと発六郎…いや速穂児は同時に言った。
それって…どういうこと!?
村雨の正室は困惑したようにあたしたちを順繰りに見回した。
「速穂、あなた、いきなりいなくなったと思ったら、このような人たちを連れてきて…千集が心配していますよ。顔ぐらい見せてあげなさい。それに、この人たちは、一体どなたですか。あなたの妻ですか。もしや結婚の報告に…」
「妻!?い、いえ義母上、この人たちは…」
「村雨の奥方様」
一気に挙動不審になった速穂児を押しのけて、あたしは膝を進めた。
「わたくしは、前田家の瑠螺蔚でございます。突然このように押しかけ礼を失した振る舞い、誠に申し訳ありません。ですが、村雨家もあまりのなさりよう。こちらの理由はわかって頂けますね」
「まぁ、前田家!?」
にわかに村雨の正室の表情が生き生きと輝きだした。
なにやら話が通じていないぞと思った時、隣で速穂がそっと囁いた。
「瑠螺蔚。前田に手をかけた件、義母は一切知らない」
それもそうか。自分の愛する男を殺されそうになってこんなにのほほんとしていられるわけがない。
「ええ、ええわかっております。それで、姫直々にいらして、ご用件は何かしら」
あたしの手をとらんばかりの喜びように、あたしはふと憐憫の情をもった。
夫を亡くしたばかりのかわいそうなこの人が、誰かにだまされているのは、もうほぼ間違いない。
そしてその相手はきっと、この村雨の正室のことを、本当に愛しているわけではないのだろう…。
「村雨の御内室。こちらの人物に、見覚えはありませんか」
あたしが指さす先、これまた状況のわかっていない父上を見て、村雨の奥方は首をかしげた。
「いいえ…申し訳ないですけれども、わたくしには…この方がなにか?」
「そう、ですか。ところで、父とはいつ出会われたのですか?村雨家と前田家は、これまであまり関わりもなかったように思いますが」
「ん?わし…」
「ちょっと黙ってて!」
自分の話になったのを感じ取り、きょろきょろと所在なさげにしていた父上がここぞとばかりに話に入ろうとするのをはねのけて、あたしは村雨の正室に先を促した。
「瑠螺蔚姫。お父上から聞いてらっしゃらない?ああ、やはり自分の娘には言いづらいものですものね。忠宗さまがこちらに遠駆けにいらした
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