最終話『君とともに』
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もなさそうな表情になるのだが、すぐに首を横に振る。
「だからさ、多分ナミの好きな人ってあの麦わらたちの船の中にいると思うし、俺がそこに行っても邪魔になるだけだし、というか俺がそもそもあの海賊船に乗っけてもらえるとも思えないし――」
グダグダと。
おそらくというか10人いればその全員が苛立ちを覚えるであろう長い長い文言を吐き出そうとするハントについにベルメールの鉄拳が舞い降りた。
「ってぇ!」
「うっさいわね! もっと自分の気持ちに正直に生きろって私は言ってんの! わけのわからない理由ばっか考えてる暇があるならその前にアタックして玉砕でもなんでもしてきたらどうなの!」
「……んな無茶な」
「無茶も粗茶もあるか! 男のくせいにうっとおしい!」
ここまで怒られたら今までの感じからしてハントは素直に言うことを聞いてなんらかの行動を起こす。そう考えていたベルメールだが、ハントはその予想通りには動かなかった。
「……」
そこでなぜか遠い目をして、酒をゆっくりと喉に押し込み、ほっと一息ついた。
「ベルメールさん、さ」
「な、なに?」
急に大人びた態度をみせるハントに、鼻白む。
「俺……ナミの邪魔をしたくないんだ」
波間に写る大きな半月を見つめて、また酒を一杯。もしかしたら彼の中で月見酒でもあるのかもしれない。実に優しい目で海に生まれた月を見つめている。
「邪魔って……一緒に行きたいとかそういうの言うだけでもいいじゃない」
その言葉にそっと首を横に振る。
「今のナミはもう海賊で、ナミはルフィの船の一員で。もしも俺がナミに一緒に行きたいって言って麦わらが俺を迎え入れてくれたらそれはそれで万事解決。俺も嬉しい。でもさ、もしも俺が海賊入りを断られたら?」
「……断られたらって」
「ナミは、さ。根本が優しいから、優しすぎるからきっと俺と一緒に海を回ろうとしてくれると思う」
「そ、それは――」
――ありうる。
言葉を呑み込んだ母親の態度がつまり肯定を示しているととったハントは今度は皿にもってあった肉にかぶりつく。
「でも俺じゃだめなんだよ。あいつらは一回ナミに裏切られたのにまたわざわざ迎えに来て、海軍からもここを救ってくれた。多分俺がいなかったらアーロンだってぶっ飛ばしてくれてたと思う。そんな仲間思いで、しかも話してるだけでも楽しいあいつらといたほうが絶対ナミにとっても幸せなんじゃないかな……あの海賊の中には多分ナミの好きな男もいるんだろうし」
寂しい目をして、それでもぶれずに言い切ったハントの言葉をベルメールが否定しようと口を開く。
「それはちが――」
「――違わないさ」
今日はじめて見せた強い意志の言葉。
少し前までモジモ
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