最終話『君とともに』
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しかもナミには先客、要するにいい人がいる。
そうなるとナミがハントとの二人旅に嫌悪感以外の感情を見せることは考えられない。
「先客、先客ねぇ」
――ナミのことだからきっと島民じゃないだろうし……となると……海賊の誰かか?
「……って何を考えてるんだ」
首をぶんぶんと振り回し、脇道に逸れてしまった考えを振り払う。
今ハントの中では二つの道がある。
一つはこの島で暮らすこと。ベルメールたちと暮らし、のんびりおっとりと自己鍛錬を忘れずに日々を生きるという形だ。ずっと子供のころのハントの描いていた形とほぼ変わらない形でもある。
そしてもう一つはどこかの海に出る。
とは言っても自分を鍛える目的で海に出るというのもどこかしっくりとしないものがハントの中にはあった。そもそもたいした航海術がなければ船だって今はない。
実に現実的ではないのだ。
「となると、必然的にこの島でまた暮らすことになるのか?」
それはそれで悪くないのは確か。
今のハントなら釣り以外にも海中にもぐって大物の魚を取ってくることだって可能なのだからきっと豪勢な食卓を囲めることになる。
「んー、ま、それもいいか」
ハントの中で結論が出た。自分の墓に手を合わせて立ち上がる。
いつの間にか空になってしまった酒瓶に気づき、宴の中からまたなにかかっぱらってこようと歩き出し――
「――おっと息子よどこへ行く」
ベルメールがその首にがっちりと腕をかけた。
「べ、ベルメールさん」
慌てて体を離そうとするハントだが、ベルメールのホールドはどうもはがれそうにない。両手に酒と数種類の食物が盛られた皿があることから共に呑もうという証なのだろう。
「逃げないから腕をはずしてくれる?」
「お、ものわかりがいいわね」
どうやらベルメールはもう酔ってしまっているらしい。
だがそれも仕方のないことだろう。なにせ死んだと思った息子が帰ってきたかと思えばその息子がアーロンパークを潰してくれたのだから。まさに一粒で二度おいしい状態に違いない。
酒をぐいと勧めるベルメールの行動に、ハントは困ったように、だがやはりどこか嬉しそうにそれを一気に呑む。
「ベルメールさん」
「んん?」
「ベルメールさんはナミが海賊になるのをどう思う?」
「んふふ、ナミが本当にやりたいなら止めないわね……というかあの子が止めて言うことを聞くわけないし」
「はは、それは確かに」
「それで、あんたはどうするの」
「俺? ……俺かぁ」
先ほどまでずっと考えていたことだ。すぐに答えようと口を開こうとして、なかなかそれを伝えられない自分に戸惑う。もしかして迷っているのだろうか。自問し、だがそれに苦笑。
意味のな
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