最終話『君とともに』
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、この海軍第16支部ネズミ大佐が――」
ハントの我慢が遂に限界に達しようとしたときだった。
「――うるせぇ!」
「!?」
ネズミを殴り飛ばす一陣の影。
「む、麦わら!?」
「人が喜んでるところを邪魔すんじゃねぇよ!」
次々と海軍たちを殴り飛ばしていく麦わらとその一味。
――不覚にもかっこいいと思ってしまったじゃないか。
逃げ帰るネズミ大佐に罵られる麦わらの男、ルフィの背中に、ハントは呆けた表情で魅入り、そのルフィの隣に立つナミへと目を配る。
――そこにいてこそ、だよな。
ナミはやはりルフィたちの仲間。
それを実感し、ハントは苦笑を浮かべつつもそっとため息をつくのだった。
また夜がやってきた。
時折吹く風がやさしく肌を包み、潮のにおいをそっと運ぶ。今日もまた静かな波間に半分かけた月が大きく浮かぶ。
アーロンパークの陥落に、島をあげた盛大な宴が開かれていた。
その宴は一夜で終わることはなく、その次の夜も、そのまた次の夜も終わらない。
彼らが笑うのはいつぶりのことか。
今まで耐えに耐えた8年間。笑えなかった今までのときを一気に開放するかのようにまた今夜の宴でそれを発散する。
人々は今日という日のために、笑うために生きてきたのだから。
終わらない島を挙げての宴の中、そっと一人たたずむ影があった。
黒い服と灰色の甚平。いうまでもなくハントだ。
この組み合わせの服を着てまだ数日だというのに、その服は既に彼の代名詞となりつつあった。
そのハントが酒を片手に己の十字架の前に座り込んでいた。
「……昔に死んだ俺とのご対面、ってか?」
誰に言うでもなく一人で笑いながら酒をかっくらう。
全てが終わり、目的を果たしたその顔は島民のそれとは違い決して明るいといえるそれではない。
「……なぁ、俺。何をすればいいと思う?」
もちろん目標はある。
彼の師匠との誓い。ジンベエを超える強さを見につけること。
それはハントにとって揺らぐことのない目標だ。
だからハントが迷っているのはこれから先に進むべき自分の道ではない。迷っているのは自分がどういう道を進むか、だ。彼の幸せな頭の中では島を救い、ナミと再会し、ナミと共に世界を回る旅をする。その旅の中で、ナミは海図を書き上げ、自身はさまざまな人間に出会い成長する。なんて、幸せな旅を本気で考えていた。
だが、現実は違う。
「海賊で、しかも先客がいるんだもんなぁ」
ルフィたちはいい奴らだ。ハントは掛け値なしにそう思っているし、だからこそきっと自分ひとりと旅をするよりもナミは幸せになれると信じている。だからもうそれに関しては何もいえない。
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