第二十一話「男の過去なぞ根掘り葉掘り聞くものではない」
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イということはよく分かったわ」
「そうか? それはなによりだ。それで、他になにか質問はあるか? 答えられる範囲でなら答えるぞ」
イッセーくんが手をあげる。
「レイが使うその『虚現』ってのは、どこまでが有効なんだ? 例えば時間を止めたり、生き返らせたりはできるのか?」
「ふむ。時間を止めるというのは範囲を限定すれば可能だな。しかし、生物の蘇生や創造は出来ない。俺の魔術は言ってみれば世界という相手を騙し、誤認させるものだ。致命傷を無かったことにすることや、存在しないはずの物を造り出すことは出来ても、一度死んだ命を生き返らせたり、生み出すことは出来ない。世界の理に反した行動だからな、流石に騙しきれん。これに逆らおうものなら俺は異分子ということで消滅させられるだろう」
彼の魔術にそんな秘密があったのですか。確かに命を創るなどの行為は個人としての能力を越えますわね。しかし、それを差し引いてもその力はあまりに強大ですわ。
「他に質問はあるか? …………無いようなら俺はこれで失礼させてもらうぞ」
彼が立ち上がる。それを見た私は慌てて止めようとするが、
「ちょっと待ちなさいレイ。朱乃から大切な話があるそうよ。邪魔になるだろうから私たちは少し外に出ていましょう」
リアスがイッセーくんたちを引き連れて外に出る。突然の行動に唖然としていると、小さく「今回だけよ……頑張りなさい」との声が。
――もう、リアスったら。……感謝しますわ。
「ふむ? よく分からんが、話があるなら聞こうか」
再びソファーに座る。その目は真っ直ぐ私を射抜いていた。
――そういえば、二人きりなのですね。
室内には自分と彼しかいないのだと改めて認識した私は高鳴る動悸を抑えながら、口を開いた。
「……十三年前のことを覚えていますか?」
「十三年前?」
「はい。十三年前の夏、とある神社で一人の女の子と女性を助けたことを、覚えていますか?」「神社、女の子……?」
顎に手を当てて考え込む彼を固唾を呑んで見守る。出来ることなら覚えていてほしい。思い出してほしい。
「………………ああ。そういえば、堕天使に襲われていた女性と女の子を助けたことがあったな。もしかして――」
覚えていてくれた! 零れそうになる涙を堪えながら笑顔で頷く。
「はい、私があの時の子供です。一言、お礼を言いたかった……」
ダメだ、やはり堪えきれない。
私はポロポロと涙を溢しながら頭を下げた。万感の想いを込めて。
「あの時は、ありがとうございます」
――助けて下さってありがとうございます
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