暁 〜小説投稿サイト〜
好き勝手に生きる!
第二十一話「男の過去なぞ根掘り葉掘り聞くものではない」
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
に高みに上り詰めた。世界最強とまで言われたな。だが、高みから見下ろした景色は色褪せて見えたよ。上り詰めても何もない、あるのは『最強』という座と虚無だけ。夢を実現させた俺のそれからの日々は退屈だった。
 人生の全てを夢の実現に費やしていたからな。それが達成した時、生きる意味を失ったとでも言うか、それに等しいくらいの虚無感が日々の生活に付きまとっていた」


 再び、紅茶で喉を潤す。普段の彼を知る私たちにとって、彼の話す内容は驚愕の一言に尽きた。生きる意味を失うというほどの虚無感、それを想像することしかできず、共感できないのがもどかしい。


「しかしある日、ふと俺は思いついた。この世界ではない世界、今ではない時代なら、俺に新たな目標を――夢を見させてくれるのではないかと。この考えに至った俺はとある魔術を完成させた。それが俺の力の源、原点だ。名を『虚構と現実の境界線』という。俺は縮めて『虚現』と言っているがな。
 こいつは魔術の到達点の一つだ、秘奥中の秘奥。その力は『虚構を現実に現実を虚構に変える』。この魔術で俺は世界という枠から外れ色々な異世界を渡った。自身の寿命を虚構に変えてな。だから俺はもはや人間とは呼べない存在となっている。骨の髄――いや、魂の髄まで魔術に浸してあるからな。いわば、俺自身が魔術と言ってもいいかもしれん」


 言葉が無かった。彼自身が、魔術……? けれど、それなら彼が不死身なのも、転移魔方陣なしで転移することも、どこからともなく炎を出したのも、全て説明がつく。


「まあ、俺が何者なのかと力に関してはこのくらいでいいだろう。さて、次は今の俺の姿と精神状態か」


 それも気になるところですね。いえ、私的にはこちらの方が気になります。固唾を呑んで見守っていると、彼がふと微笑んだ。


「――なにをそんなに緊張しているんだ君たちは。これでも飲んで肩の力を抜け」


 彼が再び指を鳴らすと私たちのテーブルの前に紅茶の入ったカップがどこからともなく現れた。これもその『虚現』という力によるものですか。確かに便利ですわね。


「……美味しい」


 一口飲んだ小猫ちゃんが思わずといったように感想を零す。それを聞いた彼は嬉しそうに笑った。その笑みに思わず胸が高鳴る。


「それは良かった。では、肩の力も抜けたところで話を進めるかな。――さて、俺の今のこの姿および精神は先程説明した通り、昔のものだ。もう一万年も前の姿だがな」


「一万年!? お前って何歳なんだよ?」


「ん? そうだな……正確な年齢は覚えてないが、ざっと三万歳くらいか?」


 イッセーくんが驚く。私たちも彼の年齢を聞いて目を見張った。話の内容から高齢とは思っていましたが、三万歳……。


「ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ