VIPが居た理由とフラグ回収
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口止め料兼脅迫であるなんて回りに言える訳がない。
だから、ヤンはある程度不自然と分かりながらも話をそらしにかかる。
「私に言わせると、食物消化器官はあるけど、複数のエネルギー供給源がある君らがなんでそこまでケーキにこだわるのか理解できないな」
「製造時におけるレゾンテートルにまで組み込まれていますから。
アパチャー・サイエンス・テクノロジー社製造アンドロイド『リトルメイド』シリーズには。
甘い物好きとケーキ好きは、多分、人間らしく女の子らしくという事なんでしょうが」
もちろん、この元ねたありの会社を設立したのは故人となった人形師である。
政権末期に多くの公職を退いた彼は、アンドロイド研究開発の中枢企業であるこの会社の経営権だけは死ぬまで手放さなかった。
それが功を奏してここまでの繁栄を謳歌しているのだが。
それた話に乗ってきた准尉が話し終わるのを待って、ヤンは准尉に頼む事にする。
「准尉。
第十偵察隊司令部経由でアクセスで……」
「艦長。よろしいでしょうか」
ヤンの口を止めたのはパトリチェフだった。
このあたり、現場が長かった事もあって、ヤンが避けようとした非合法手段による上位情報アクセスを巧みに進言したのだ。
「兵は知らずに死んでも構いませんが、兵に死ねと命じる立場が知らなかった場合、兵の遺族から石を投げられますよ」
こういう事が言えるからこそ、ヤンはパトリチェフを信頼していた訳で。
ベレー帽の上から頭をかきつつ、ヤンが気持ちを落ち着けるためにぼやく。
「ケーキの代金、高くなりそうだ」
「この駆逐艦よりは安いでしょうに。
小官も少しは支援しますので」
後に、二人の一月分の給料がぶっ飛ぶ、フェザーンの帝国貴族用菓子メーカー同盟支社のケーキのデータを送られて真っ青になるのだが、今の二人はその未来を知らない。
あんな小さなケーキで月給ぶっ飛ぶなんてと男には絶対分からない女の世界を垣間見るのだがそれはさておき。
「お姉さまにも、今回の件のアクセスを頼む。
あと、『ハイネセン一の高級ケーキを用意する』と伝えてくれ」
宇宙は広大で、送られた情報が帰ってくるのにある程度の時間を要した。
だが、帰ってきた情報には格差があり、ヤンは裏技を行使した事を感謝する事になる。
第十偵察隊司令部経由の機密はD級で、ワレンコフ代将相当官の事は考慮していないという判断だった。
とはいえ、えられた情報が無為ではなく、ここ近年海賊の活動が活発でイゼルローン回廊が海賊の主要航路となっている事実を示していた。
代将相当官の「ゴミ漁り」発言を考えるならば、狙いはゴミ漁りのついでに海賊退治という所。
第十偵察隊司令部はそう判断していたので
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