第一話 脅迫
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しかし、その目はまるで子供の様で、どれもコレもが目新しく感じている様だった。ひょっとしたら海外からやって来たのだろうか、海外のスーパーは日本のソレとはだいぶ勝手が違うと聞くが、ひょっとしたらソレのせいもあるのかもしれない。
このまま放っておこう、と思ったが、周囲を見るとやはりお昼時。人ごみがまぁスゴイ。迂回して通り抜けようにも、迂闊に動き回ることもままならない。仕方なく、はやてはその男に道を譲ってもらうことにした。
「あの、すいません。ちょっと通してもらってもええですか?」
「ん、あぁすまない。お邪魔だったかな」
「いえ、ちょっと混んでて迂回できそうもないんで。ご迷惑おかけします」
「問題ない。ところでお嬢さん、この棚の食品なら何が美味しいと思う?」
男が指差したのは、弁当の棚だった。
から揚げ弁当、幕の内、鮭弁当、色とりどりの弁当の中からどれがいいかと、男ははやてに聞いている。お値段もリーズナブル、それにお昼時もあって商品のポップに『十一時の出来立て!』と手書きの紙まで張っている。
道を譲ってもらうと言うことで、はやては割と真剣にどれがいいかを考えた。まぁ要約すれば、自分がどれを食べたいかと言う点に話は傾いてしまうのだが。そんなはやてが手にしたのは、
「コレなんか、えぇんちゃいます? 『チキン南蛮弁当』、昔はわたしもよう食べとったんですよ」
「『チキン南蛮』か……」
男は徐にソレを手に取ると、ソレを足元に置いていたカゴに入れた。
かごの中にはドリンクやデザートと言った、食品ばかりが入っている様で、はやては『食いしん坊やなぁ』といった印象を受けた。
「いやなに、日本に来たのは実は昨日の事でね。この国の小売事情の事はあまり知らなかったんだ、しかしまぁいい国だな、ここは。こうやって食事にも手を抜かないとは」
「外国の方やったんですか? でも顔立ちはなんか、日本人ぽいっていうか……」
「先祖が日系だったそうでね、その名残だろう……と、道を譲る話だったね。さ、どうぞ」
「あ、おおきに。ほなシャマル、いこか」
はやては振り返り、車椅子を押してくれるシャマルのほうを見た。
しかし、そこで見たのは、
「…………シャマル?」
嫌な汗をかいて、瞬きすら出来ずにいる、自分の家族の姿だった。
硬直、と言う言葉が正しく適用できる。彼女は、目の前の男を凝視したまま、一切の身動きがとれずにいる。
「シャマル、どないしたんや? シャマル!?」
「…………なにかのショック症状だろうか。よろしくないな、店を出よう。かまわないかな、お嬢さん?」
「お、お願いします!」
はやての脇を抜け、そっとシャマルの頬に手を添える。
周囲の視線が徐々に集まりつつある中で、男はシャマ
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