第一話 脅迫
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十二月七日。早朝六時。
海鳴市。周囲を海や山に囲まれた、開発都市でありながらも自然を多く残す大都市。
医療、勉学、市政、公共施設、食品から家電雑貨なんでもあり。都市機能として必要なものは、全て揃っているといってもいい。
その都市の中心部、一等の高層ビルの屋上。その淵に、一人の男が立っていた。
男の名は『次元遺伝子集積体』。人ではないなにか。その男は、目覚めて数百年ぶりの太陽を見ていた。東から昇り、西へと沈む。何処の世界も変わらない、そしてとても、懐かしい輝き。
視界を下へと向ければ、足元には無数の鉄製の騎馬が地上を走る。自動車という乗り物だ。化石燃料を使用して走るらしい。彼の知る乗り物は大抵、魔力で動いていたものと覚えている。その点で考えれば、この世界は魔法文化を抜きにしてここまで発展を遂げた。その点は誉めるべき箇所でもある。
しかし欠点を挙げるならば、この世界は全て『消費』によって動いているというところだ。消費し続ける限りは、いつかは底を尽きる。そうなった時この世界はどう対応するのか、そこにも興味が沸いてくる。
「情報収集完了………文明レベルの低さに救われたか」
『そのようですね。この世界は質量兵器に対しての対策は十分ですが、魔法文化への対策は当然ながら一切講じられておりません。そこが大きいようです』
『生物学的には、中々に目覚しい進化を遂げています。遺伝子の蒐集はどうしますか?』
「後回しだ。どうせ俺はすぐに眠る事になる、『楔』を適当に飛ばしてソレで終了だ。なら、少しは有意義に世界を見てみたい……衣服に関しての情報は?」
『注文だった「目立たない」「簡素」「防御兼任」として、最適なものを選択しました。着用されますか?』
「頼む」
男の頼みに、全身に埋め込まれたデバイスが輝きを放つ。
黒色の魔力光と共に、インナーの上から一瞬で衣服が製造される。ほんの一瞬。その後に出来たのは、相も変わらず全身真っ黒なバリアジャケット兼任の衣服だった。スタンドカラーのロングコート、軍用のミリタリーブーツ、黒のミリタリーカーゴ、そして黒のタートルネックのセーター。
確かにコレなら目立たない。それに簡素だ。素体の外見年齢や、冬場の環境にもあっている。
ファッションへのこだわりなどは毛頭無い。あるのはただ、どれだけ合理的かつ効率的かということだけ。
眼前に右手を凪ぐように払うと、彼の視界に複数のディスプレイが表示される。この世界に飛ばした、情報収集装置『オベリスクの楔』が回収した情報だ。彼の身体に埋め込まれたデバイス達がそれらの情報を最適化し、現状必要な情報のみを彼に開示している。
拠点となるこの海鳴市の地形情報、世界情勢、金融事情、食文化、言語、一般常識。
そもそも『オベリス
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