第5章 契約
第57話 ハルケギニアの夏休み・宴の夜
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れたら。いや、最悪、死亡してから間のない死体だけでも俺の傍に帰って来てくれたのなら、蘇生させる事は不可能ではないのですが……。
………………。
ほんの少しの沈黙に、妙に不吉なイメージが重なって浮かんだ思考を、右手で顔に掛かって来て居た髪の毛を掻き上げる仕草で振り払う俺。
そう。どうやら少し考えが悪い方向に進んでいる様な雰囲気ですから。そもそも、ルイズや才人がアルビオンとの戦争に参加すると決まった訳では有りません。まして、ルイズは三女とは言え、トリステインの公爵家の姫。そんな人間が前線に……。
そう言う少し甘い考えが頭に浮かんだ瞬間、俺の隣で、蒼き少女が紐解く和漢の書籍のページを捲る音が、ヤケに大きな音として深夜の店内に響いた。
そう。元は付くけど、大公家の姫が最前線に立たされる例も有る。まして、ルイズの魔法の属性は伝説の魔法の系統。そして、才人は伝説の使い魔。
更に、才人は、剣と魔法のファンタジー世界で、零戦と言う未来の飛行機械を操る事が出来る人間でも有る。
彼と彼女が、戦場に赴かない理由を探す方が難しいですか。
「俺とルイズが、何故、こんな店で働いているのか、その理由は聞かないのか」
テーブルの上に並べられた護符や呪符に手を出す事もなく、才人は先にそう聞いて来る。彼が発して居る気は陰。隠し事が有る人間が放っている事の多い雰囲気。
「公爵家の姫君が就くべき仕事ではないな。社会勉強。庶民の暮らしを知る為の行いだったとしても、もう少しお上品な仕事と言う物が有る」
少なくとも、タバサが同じような任務に就く事を、俺ならば断固拒絶するだろうと言う職業。確かに職業に貴賤は有りません。しかし、それでも、この任務をガリアが命じて来たのなら、俺は彼女と彼女の母親を連れて逃げ出します。そして、その点は才人もあまり変わらないでしょうから、それでも尚、ここで彼女が働かなければならない、とするのなら、宿屋兼酒場のここでなければならない任務と言うのが有るのでしょう。
前に、アルビオンに向かった時のような、トリステイン王家の密命を帯びた任務と言う物が。
「ある程度の察しは付くから無理に話して貰う必要はないし、聞き出そうとも思わない。少なくとも簡単に話せる内容なら、歌を歌っている間にルイズの方から話してくれたはずやからな」
しかし、現実にはルイズはこの店で働いている理由について語る事は有りませんでした。
更に、タバサはもちろんの事、キュルケの方も、その理由について問いただす事も有りませんでした。
タバサとルイズの立場は、ほぼ同じ。それならば状況を類推する事は簡単です。そしてキュルケは、かなりの観察眼を持つ洞察力に優れた頭の良い女性ですから、ルイズの状況を想像する事も難しくはないでし
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