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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第57話 ハルケギニアの夏休み・宴の夜
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好をしてまで働いている理由については定かでは有りませんが、それでも、この魅惑の妖精亭で働かなければならない理由が有ったのでしょう。
 そして、キュルケにしても、タバサが戻って来るまで学院の方で待って居てくれたのです。夏休み直前に、学院全体が異界化して仕舞うような異常事態に見舞われた、更に、戦時下のイメージが濃くなって行くトリステイン魔法学院に。

 いや、戦時下の様相が濃くなっているのは、魔法学院だけでは有りませんか。このトリステイン。いや、多分、この中世ヨーロッパに似た大陸すべてが、キナ臭い雰囲気に包まれつつ有るのは間違い有りませんからね。

「忍やタバサが何をしていたのか聞いても良いか?」

 ルイズやキュルケの寝息を聞きながら、そんな事を考えていた俺に対して、最後に残った俺達のテーブルを綺麗に磨き上げながら、才人がそう聞いて来た。
 少し、不意打ちに等しいタイミングで。
 但し、それは正直に答える訳には行かない問い掛け。いくら、公然の秘密とは言え、タバサがガリア王家所縁の者で、今は勲功爵。つまり、ガリアのシュヴァリエに任じられて居て、騎士としての仕事に従事させられている、と言う事を教える訳には行きません。

「色々やな。色々なトコロに行って、色々な人に出会って。割と楽しい四、五、六、七月を経験させて貰ったで」

 向こうの世界でも、そんなに違わない生活を営んでいたのですから、生命の危険に関して問題は有りません。板子一枚下は地獄。これは、何も船乗りの生活だけを表現する言葉では有りませんから。
 世界の裏側には魔法が存在していて、俺が知って居るだけでも、俺が生まれてから今までの間に、世界が崩壊するような危機に陥る邪神や魔神が現界しようとした事が、最低でも二度は有りましたから。

 まして、その内の一度は、俺も当事者でしたからね。

 日常と言う世界の裏側。薄い舟板一枚下には荒れ狂う異界が存在していて、その一枚の舟板が俺達のような存在だったのです。俺が生まれてから、十六年間暮らして来た世界と言うトコロは。

 そんな事を考えながら、俺は、懐から数枚の呪符と、青玉製のタイピンを取り出す。
 そして、それらを才人が磨き終わったテーブルの上に並べた。

「新しい護符(タリスマン)や。前に渡した分は、そろそろ効果が切れている可能性が有るからな」

 これでしばらくの間、才人は龍の属性を持ち、呪符の枚数分の魔法や物理攻撃を反射する事が出来る、……と言う事に成ります。
 但し、

「前にも言ったけど、護符も呪符も万能やない。何時かは効果を失い、相手にその効能を知られたら、その護符や呪符を無力化する方法やって有ると言う事は理解して置いて欲しい」

 何事にも絶対はない。その事を理解して、そして生きて帰って来てく
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