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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第57話 ハルケギニアの夏休み・宴の夜
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「まして、俺は別に好戦的な性格ではないからな」

 そう言いながら、元々の席。タバサの隣に腰を下ろす俺。それに、どうやら俄か吟遊詩人役は一曲だけで良さそうな雰囲気なので、この余裕のある態度と成っているのですが。
 歌い手のタバサは、俺と、トリステイン王国軍士官どものやり取りを気にする事もなく、既に自らの席に着いて御食事を開始して居ますから。

 しかし、

「ちょっと待ちなさいよ。落ち着いて、しかも、このわたしの許可も得ずに、何を勝手に席に着こうとしているのよ」

 先ほどの説明で納得した、と思っていたルイズが、矢張り、少し不満げに俺を見つめながら、首から下げた銀製の十字架に指を当てる。
 尚、この世界には十字架をシンボルとする宗教はないはずなのですが、この行為は彼女に取って精神を落ち着かせる意味が有るようです。

 もっとも、これ以上、俺に出来る事もないですし、それに、

「飯を食いに来て、飯を食わずに何をしろと言うのですか、貴女は」

 少し呆れたような台詞を口にした俺は、そのまま、テーブルの上に並べられた焼売を口に放り込む。まして、ここにはルイズの顔を見に来た訳では無く、飯を食いに来たのですから、これは当然の行為ですからね。
 ……………………。
 あれ、そう言えば、この店には飯を食いに来た訳でもなく、キュルケに連れられて、人生の真実とやらを探す為に、来たような記憶も有るのですが。

 そんな、キュルケの口から出まかせの台詞を頭の中で反芻しながらも、口の中では少し大きめの焼売の咀嚼を続ける。
 うむ。矢張り、日本人の俺としては、サケのパイ包み焼きよりは、チープですが焼売の方が口には合いますね。身体や栄養価的に言うと、色々な材料を使用しているパイ包み焼きの方がずっと良い料理なのですが。

「アンタに楽器を扱う才が有るのなら、今度はわたしの為に伴奏をしなさいよ」

 腰に手を当て、やけに威張ったような素振りの、上から目線で俺にそう命令するルイズ。
 そう言えば、キュルケはラ・ロシェールの街で俺の鎮魂(たましずめ)の笛を聞いた事が有りましたけど、ルイズに関しては今晩が初めてでしたか。

 しかし、それでも……。

「おいおい、ルイズ。俺は、即興で歌い手に合わせて音楽を奏でられる程の音楽的才能に溢れている訳やないで」

 そもそも、俺はジャズピアニストじゃ有りませんから。
 それに、俺が連れている式神はハゲンチで、こいつの能力は手技や芸妓の伝授で有って、音楽的な能力専用の職能と言う訳では有りません。その手の能力で有名な悪魔は、『悪魔のトリル』で有名なソロモン七十二魔将の一柱、魔将アムドゥシアスでしょうね。
 俺の式神には、残念ながら、天上や魔界の楽士と呼ばれる連中は存在して居ませんか
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