5 「非日常な一日」
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れると再び胸にクる何かがある。やばい、泣きそう。
デュラクの迎えを今か今かと待ちつつ狸寝入りすること30分。
本気でうつらうつらし始めたとき、耳に愛しき相棒の声が聞こえた。ヒャッホウ! 叫び出したくなるのをこらえて、さも今目が覚めましたというように起き上がる。
『迎えだ』
困惑している少女に、すでに耐久値限界だった青年は早口に答えた。一刻も早く相棒に癒されたい。そしてストレス性胃腸炎になる前に薬草を飲んでおきたい。周りの風景から、これはヨルデとは反対側の道だ。頭の片隅でユクモ村のハンターだったのかと思う。
『村はここからまっすぐだよね。俺が把握できる範囲ではモンスターもいないようだし、じゃあこれで』
ところがそうは問屋が下ろさなかった。少女が腕を掴んできたのだ。思わず肩がはねた。振り払わなかっただけ褒めて欲しい。怖いものは怖いのだ。それが例え子供だろうと、大人だろうと、美少女だろうと。
(嘘でしょ!? この上なんの拷問だよ!?)
何かと思ったら礼を言われた。なんだそんなことかとホッとして、つい余計なことまで口にしてしまう。さり気なく腕は外して。
『いやいや、そんなこと。……寧ろ俺たちが原因みたいなもんだから』
首をかしげた少女にあわてて返す。久しぶりの人との会話で、しかも言われたことがそうそうない“お礼”をされて、ついつい心が沸き立っていた。老婆心のようなもので警告もする。あれ、俺ってそんなに歳だったっけか。いや大丈夫。まだ21だ。記憶が正しければ。
『なんでもないよ。そうだ。あまり渓流の奥には近づかないようにね。最近は物騒になったから』
渓流の奥という言葉が気になったのだろう、ユクモ村とは渓流を挟んで反対にある村、ヨルデ村のハンターかと聞かれた。デュラクというナルガクルガと共に住む人間が、モンスターを狩る狩人と思われるとは。なんだか笑える。
『違う違う。……ただの、渓流の一軒家に住む人嫌いの物好きさ』
言ってて悲しくなってきた。
そう、人嫌いの物好きさ。俺は。
そのまま逃げるように崖に飛び出した。そうしてたかが半時間ぶりの再会に歓喜の涙を流してその背に飛び乗ったのだ。
「デュラク、ありがとうな」
ピィ?
威嚇している時からは想像もつかないような可愛い声で返事をされる。嬉しくなって年甲斐もなく艶やかな毛皮に抱きついた。
――俺はやっぱり、人といるよりもこいつらと一緒の方が自然だ。
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