5 「非日常な一日」
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タリアン料理にしよう。この頃肉ばっかりだったしな。……お、これドスマツタケじゃん。ラッキー』
渓流の滝の横の岩場を軽快な足取りで登ってゆき、ケルビが集まっている岩場の一部をピッケルで砕く。薄い橙色のそれは、なんと岩塩だ。ケルビはよくこの岩塩を嘗めにくるのだった。ミネラル分の補足だろう。野生の鹿のようだなと青年は思っていた。
『それにしても、料理に使える塩が全部岩塩って…贅沢だよな。ちょっと不純物としてのマカライトとかカブレライトは邪魔だけど』
サシミウオはその名のとおり生で刺身として食べても美味いが、塩焼きにしても美味い。醤油という万能調味料を持たない青年は、ホクホク顔でそれをポーチから取り出した小瓶に入れた。
『ある〜日 森の中 くまさんに 出会〜った♪』
機嫌よく鼻歌を歌いながら自宅を目指す青年は、ふと足を止めた。ケルビがせわしなくあたりを見回す。
『おまいら、逃げたほうがいいかもよ?』
追い立てるように両腕をケルビ達に向かって振ると、一斉に木立の中へと消えていった。残った青年はポリポリと頭を掻きながら、困ったように空を見上げている。
『俺も、逃げたほうがいいかもねぇ。今武器持ってないし……』
ケルビを追うように木立に消えようとした青年は、だが足を止めた。足元に伸びる影が、消えている。苦笑しながら振り向くと、
『時すでに遅し……か。うわ、しかもレウスかよ。上位じゃないといいんだけど』
武器も持たず、ついでに防具もなしに【空の王者】と名高いリオレウスを相手にするなど自殺行為に等しい。地面を蹴って崖を飛び降りる。一秒前、青年が足をつけていた岩場に炎が炸裂した。
飛び降りながら背中の竹籠を上空に水平に放り投げる。着地と同時に前転して威力を殺し、直後落ちてきた籠をキャッチ。再び背負い直した。
(あの火球の大きさは、上位レウスだな)
とりあえず背中の竹籠を守ることを最優先に(でないと今日の昼食がなくなってしまうので)、リオレウスから逃げ回ることにする。直にテリトリーを侵されたことに気づいたデュラクがすっ飛んでくるだろう。
卵の頃から育て上げた彼のナルガクルガは、並みのモンスターよりよっぽど賢かった。とある人物に貰ったものだが、アイルーやメラルーのように喋れはしないものの人語を理解し、ジェスチャーでそれを伝えることができる。思考能力的には人間と同格だ。運動能力はケルビにも劣る人間が、この過酷な世界で生き残るのに必要な最大の武器が知恵であるが、それを大型モンスターが身につけたら一体どれほどの脅威になるか。
もちろん飛竜の王たるリオレウスやその番リオレイア他飛竜種、古龍種なども賢い。自然の中で培った野生の本能としては一級品である。が、人間と
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