5 「非日常な一日」
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「……いやぁ、緊張したなぁ」
黒い飛竜――ナルガクルガに乗った青年は、今日一日で何回ついただろう回数の中で一番深いため息をついた。
「デュラク、怪我は? ……ああ、刃翼と尻尾がちょっと火傷してるじゃないか。あとでウチケシの実の粉と霜ふり草を貼ってやるから、ちょっとまってて。俺達の進路を守ってくれてたんだな。ありがとう」
キェェ
機嫌よく鳴いたナルガクルガ――デュラクの頭をぽんぽんと叩く。風で吹き飛ばされないように、しっかりと片腕でルイーズは抱えたままだ。頑丈な背中のふさふさの毛に掴まって、上空から渓流を見下ろした。力尽きたリオレイアが横たわっている。あれからエリア移動をしたようで、エリア9の洞窟の入口に顔を向けて倒れていた。明日当たり、確認しにきたユクモ村の他のハンターや村人が回収するだろう。リオレイアの素材があの少女達や他のハンターの装備などに生かせればいいと思った。
「それにしても、人間と話すなんて何年ぶりだろ」
「それは流石に言い過ぎニャ、旦那さん。精々1年ぶりだニャ」
ルイーズの言葉に思わず苦笑する。いつの間に1年も経っていたか。
「なあ、ルイーズ。俺何か変なところとかなかったかな?」
「強いて言うニャら荷台に乗ったあと、寝ようとしたときとかかニャ。あの長い髪の小娘は相当警戒してたニャ。いくらニャんでも目の前で寝ようとするのはどうかと思うニャ」
「だって、人としゃべるのなんて久しぶりで……」
「ニャんとか会話をしニャい方法を考えた結果が、“寝る”かニャ? やれやれまったく……。その対人恐怖症、いつにニャったら治るかニャ〜。恐怖症のくせに、お節介焼きでお人好しだから、手におえニャい」
ごめん。
やれやれと肩をすくめ首を振るメラルーに、困ったように笑って謝った。「謝る問題じゃニャいニャ」といったルイーズは、いつもよりぐっと近づいた月を見上げた。つられて青年も空を見る。月明かりに雲が照らされて、幻想的だった。
「元はといえば、あのリオ夫妻のうちレウスだけを殺っちゃったのが悪かったんだよな」
「仕方ニャいニャ。夫婦だったなんてニャア達はしらニャかったんだから」
青年も、数時間前のことを思い出す。
昼過ぎ。渓流の更に奥に居を構える青年は、今日の昼飯はサシミウオにしようと、良い釣りポイントであるとある池に向かっていた。青年の住まいは彼と共に住むデュラクのテリトリーなので、身を守る武器はいらない。青年は、いわば“縄張りの主”の主だからだ。
『今は昔、竹取の翁ありけり――ってね』
背中に竹で編んだ籠を背負い、ひょいひょいと調子よく釣った魚を無造作に後ろに放り投げる。ついでにいくらか特産キノコや特産タケノコなども籠に入れた。
『今夜は久しぶりにベジ
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