第五話 赤の実力
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「いやさ、観客ありで戦ってやらないこともないんだけどさ……覗き見の真似事はやめろよ。観戦料取り立てるのがメンドくさくなるじゃん?」
軽薄な口調、大袈裟な手振りや仕草を交えて、男との距離を少しずつ縮めていく。あと五メートルほど近づけば取り押さえられる。
「確かに、カズラみたいな美人の戦う姿ってのも来るものがあるのは分かるよ? でも、やっぱ礼儀ってもんがあるだろ?」
あと一メートル。そのとき、男が懐に手を伸ばした。
「ちっ……!」
俺は即座に反応して地面を蹴ったが、男が懐から手を出すほうがわずかに早かった。
男の手の中でカメラのフラッシュを何十倍にもしたような閃光が放たれる。これはフラッシュクリスタルというアイテムだ。暗いダンジョンを照らすときや『暗黒』のバッドステータスから回復するためのアイテムだが、近距離ならば目潰しとしても使うことができる。
眩い閃光が治まって、俺が目を開いたときには、あの男はどこにもいなかった。
「……逃がしたかぁ」
俺はため息をつくと、カズラに振り返った。
「誰だ、アイツ。そっちに心当たりある?」
「顔は知りませんが……クリスタルを使ったときに棺桶のエンブレムが見えました」
棺桶のエンブレム。そのエンブレムは、おそらくSAOでもっとも忌避されている集団のトレードマークのことだろう。
「笑う棺桶……『ラフィン・コフィン』かよ」
嫌な名前に、思わず顔をしかめる。
するとカズラは、今まで以上に真剣な表情で俺の顔を見返してきた。
「ジル。早速ですが、賭けの報酬を使わせてもらいます。――私に、少しの間だけ付き合ってください」
「その様子だと、割りとガチな話かね」
「ええ――」
カズラは頷いて、俺にとって大きな意味のある言葉を告げた。
「明日、『ラフィン・コフィン』討伐作戦が行われることになりました。あなたには――その討伐隊に入っていただきます」
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