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ソードアート・オンライン ーコード・クリムゾンー
第五話 赤の実力
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せれば終わりだ。

当然、俺がこんな分かりやすい攻撃をするわけがない。
そして俺は、カズラが間合いに入った直後、カタナを左手一本で薙いだ。

「なにっ……?」

突然軌道が変わった一撃に、カズラは驚きの声を上げた。
しかしさすがは攻略組と言うべきか、カズラは胴を狙った一撃をギリギリで受け止めてみせた。
だが、まだ甘い――。
俺は滑り込むように膝を曲げ、カズラのカタナを上へと受け流しつつその右脇を潜り抜ける。
折り畳んでいた膝を、体が向かう方向と逆に伸ばし制動。同時に体を捻ってカタナを両手に持ち替えながら、カズラの脇腹を狙って振り抜いた。
風を切る音とともに、刃がなにもない空間を通り抜ける。
ギリギリで前に跳んで避けられた。その結果に舌打ちしつつ、カタナを構え直す。
俺の視線の先で、カズラがこちらに視線を向けてくる。

「あれを避けられたのは、さすがに初めてだ」

やはり今までやりあってきたようなヤツとは違う。

「私のほうこそ……あのような動きは初めて見ました」
「初見で避けた君のほうがヤバいわー」

対人戦ならば有利、というのは間違いだったかもしれない。伊達にDDAの幹部をやっていたわけではないようだ。

「さて、では続きを――」
「いや、その必要はないよ」

今度は自分からとカタナを構え直すカズラを制止して、俺は剣を引いた。

「無理、勝てる気しないわ。リザイン、降参、俺の負け!」

俺がホールドアップしながら告げると、デュエルのウィナー表示が浮かんだ。時間は約二分、勝者は当然カズラだ。

「……ジル。どういうことですか、これは」
「どう見ても俺の降参。勝ったのは君だよ、カズラ。――ああ、安心しなよ。降参でも敗けは負けだから、言うことはちゃんと聞くって」
「でも、こんなことで納得できるはずが……」
「あー、分かんないかなぁ」

俺はため息をつくと、右手を腰に伸ばしながらカズラの背後の一点を見た。

「俺はね、観客ありで戦う主義じゃねーんだよ」

右手で派手にコートの裾を払う。
翻るコートの裾でカモフラージュして、腰から抜いた投擲用のピックを投げる。
カズラの肩口を通り抜け、彼女の背後にハイディング――姿を隠蔽していた何者かに吸い込まれていく。

虹色の光が弾けた。
街中などの『アンチクリミナルコード有効圏内』では、プレイヤーはシステムに保護されてHPが減少することがない。唯一の例外は俺とカズラのように、デュエルを受諾することだが、今回は関係がない。
見えない障壁に阻まれて、ピックが地面に落ちる。しかし、相手のハイディングは看破されていた。

「お前、さっきのヤツか」

建物の影に現れた男は、先ほどいなくなったことを確認したはずのヤツだった。


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