第五話 赤の実力
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「――へえ。……なんでも、ね……」
カズラの言葉に、俺は思わずニヤリと笑った。
直後、カズラを壁と俺とで挟むように、彼女の背後にある建物の壁に手を突いた。顔をほぼ密着させ、至近距離から覗き込む。
「じゃ、こーいうのもいいわけ?」
「どういうものかはよく分かりませんが、ジルが望むことなら」
「はぁ……ったく、いい加減箱入りぶるのはやめろっての」
「……?」
本心から分からないといった様子のカズラに、思わず舌打ちをする。これで目の前にいるのがアスナだったらボディブローの一発でももらっていただろうが、彼女は本物の箱入りのようだ。
「――ま、こっちが勝てば一晩付き合ってもらうってことさ」
「それくらいならお安いご用です」
俺の意味深な言葉も完全に流される。というかその言葉通りの意味で捉えられた。
これだからカズラのことは苦手だ。俺にとって、彼女の鈍感さというか純粋さは天敵なのだ。人を慌てさせることだけが目的の言動では、ひたすら流され続けて疲れるだけだ。
「まあいいよ。ちょっとだけ付き合ってやる」
カズラから離れて、デュエルの申請を受諾する。一対一の初撃決着モードを選択し、腰からカタナを抜いた。
このカタナは以前手に入れたインゴットから作ったものだ。アスナとクエストに行く前に、一走りして鍛冶を依頼していたのだ。普通のカタナと違って峰が赤みを帯びているところが気に入っている。
俺がデュエルを受諾したことを確認してから、カズラもカタナを構える。反りがほとんどない、片刃の直剣のような剣だった。
いい趣味してるじゃん、などと考えながらも、どこから打ち込むべきか探るのは欠かさない。
同じ武器の戦いでは、動きが読まれやすいソードスキルは厳禁だ。防がれてしまえば、どんなソードスキルでも致命的な硬直時間を強いられ、その間に勝敗が決してしまう。
そうなると、勝敗で重要となってくるのはステータスとプレイヤーの技量だ。
現在、俺のレベルはちょうど80。今の最前線が六十九層だと考えれば、攻略組の平均程度である。対してカズラはその攻略組でもトップ剣士だ。レベルはあちらのほうがわずかに上だろう。
しかし、対人戦ならばモンスター戦メインのカズラより、俺のほうが経験がある。戦力的には五分五分というところだ。
カズラはカタナを中段に構え、どこからの打ち込みにも対応できるようにしている。
それに対して、俺はカタナを右脇へと引き絞って、突きの体勢を取った。
待機時間の六十秒が経過して、俺たちの間で『DUEL!!』の文字が散った。それと同時に、俺は猛然と突進した。
俺の分かりやすい攻撃に、カズラは物足りなさそうな表情を浮かべる。それも当然だろう。このまま突きを放ったとしても十中八九避けられる。そこでカウンターを食らわ
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