第一幕その四
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おめでとうございます!」
「有り難う」
ボリスは重々しい声で応えた。
「今ここに私は皇帝となった」
彼は言う。
「そして誓おう」
言葉を続ける。
「ロシアと、そして皆の幸せと繁栄を守ると。今神にかけて誓おう」
「神にかけて」
「そうだ」
彼はまた言った。
「私は誓ったことは守る。そして平和も」
「平和も」
「皆の平和は私の手にある。今それを約束しよう」
そしてまた言った。
「神と共に。私はあるのだ」
「神と共に!」
不意に民衆達の中からそれまでの彼等とは違った声が聞こえてきた。
「ボリス様がそれを果たして下さるのだ!」
(またか)
ボリスはそれを聞いて心の中で呟いた。
(また芝居か)
だがそれは口には出さなかった。そのまま黙って立っていた。
「ボリス様万歳!」
そして誰かが叫んだ。
「ボリス様に栄光あれ!」
「ボリス様に栄光あれ!」
次第にその声は大きくなった。つられたのだ。
「栄光と長寿あれ!」
何時しかクレムリンは讃える声で満ちた。だがボリスは喜びの中にはいなかった。むしろそこに不吉なものを感じているのであった。
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