第28話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(5)
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はそれで都合だ。フェイト達は目の前の平和ボケした彼らにかまっている暇などなく、すぐにでも次のジュエルシードを回収しに行かなければならないのだから。
しかし、翻った直後に聞えてきた少年の言葉によって、フェイト達の逃亡はもう一度阻まれてしまう。
「……“母さん”が、理由?」
「………そう思うのなら、もう、私達には、関わらないで」
答えた声と同様、肩越しに少年たちを睨みつけた目は、とても冷たいものだろうなと思いながらフェイトは答えた。
彼らに、平和な場所に生まれ、育った彼らに自分の何が分かるというのだろうか。
肉親に甘やかされ育ち、友人に囲まれ、平和な環境で育った彼らに、それを掴もうと必死になっている自分の、この気持ちが。
「私達はこれからもジュエルシードの回収を続ける。……母さんの為に、だから邪魔しないで」
「坊やっ、あたしの名はアルフ! もし今度あたし達の邪魔したら、その時こそギッタンギッタンにしてやるからねっ!!」
暴れ狂う感情をどうにか押し込めてそう言うと、今度こそフェイト達はその場を全力で離脱した。
「ねぇジュンゴ。結局追いかけなかったけど、これで本当に良かったの?」
フェイト達が逃走した方角を見据えながら、リリーが不満そうに言う。あそこまで一方的に言われて黙っているほど、彼女はお人よしではない。
「ん…、追いかけちゃダメ」
純吾も、フェイトが去って行った方を見ながらそう答える。ただ、そう答える背中は普段よりも小さく、とても疲れているように後ろに控えるなのは達には見えた。
「……純吾君、とっても疲れてるみたいだけど大丈夫?」
それがとても心配で、なのはが堪らず声をかける。
彼と、彼とその仲魔と一緒にジュエルシードの回収をしていく。リリーの時は足を引っ張ってしまったが、それでも、少しでも何かの役に立ちたいと思った。
なのはの気持ちを悟ってか、純吾は今度は彼女達の方へと振り返る。
その顔は、やっぱり何かに悩んでいるような顔。
目を細め口を閉口したかのようにきつく結んで、そのくせ眉尻だけは悲しそうに下がった顔。
「…あの子。フェイトの目、」
そんなどう悲しみや不安の感情を処理していいのか分からない、という顔で純吾はなのはに答える。
「ジュンゴ、あれを知ってる。昔…うぅん、ここに来るまでずっと、あれを見ていた。フェイト、母さんの為だって言ってるのに、母さんがいるはずなのに――」
―――どうして母さんが欲しいって、目をしているの?
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