第28話 夢魔が飛び、魔猫が舞う(5)
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れに、なのちゃんの事気にいってるし。そんな子を守ろうって思うのは当たり前でしょ」
そこまで言うと、リリーは抱きしめていた純吾の頭からそっと手を離し、彼と見つめ合うような形をとる。
彼女には珍しく頬を薄く染め、うるんだ青い瞳で純吾を見る。純吾はどうして彼女がそんな顔をするのか分からず、ぽけっとした顔で見つめ返した。
そして段々とリリーの顔が純吾に近づいていき――――
「にゃーにゃーにゃー。そこまでにするにゃんよ〜〜」
もの凄くやる気のないシャムスの声が割って入った。2人同時に視線を横にずらすと、間近でぶすっとした顔のシャムスがジト目で睨みつけてくる。
「いつまでなのにゃん達をほっぽっとく気にゃ? それに早くしにゃいとあの狼も帰ってくるにゃ、百害あってもいいとこなしにゃ」
「……ん。なのはの事、心配」
シャムスの言葉にすっくと純吾が立ちあがり、近くの木に飛び乗ると木々の間を跳ぶようにして上へと昇って行った。
「ほらほら、リリーもさっさと行くにゃん…………ぷぷっ」
純吾に続いてシャムスも木を駆けあがり、振り返って口元を隠して笑う。「誰が抜け駆けなんてさせるものか」と雄弁にその顔は語っていた。
「………この駄猫、後で覚えてなさいよ」
リリーはそんなシャムスに向かって恨み事を言うと、翼を翻して空を飛んだ。
「…なのは」
少女が魔法を放った後、ずっと放心していたなのはに最近聞きなれた男の子の声が聞こえてくる。はっと我に返って辺りを見回すと、森の木々の葉の間から突き抜けるようにニット帽を被った頭が、次に体がでてくる。
「ぅ、うん……、え。純吾、君?」
「ジュンゴにゃんだけじゃないにゃん」
ぼぅっとしていたため純吾が来た事に気が付いていなかったため慌てるなのはに、更にシャムスが出てきて声をかける。
そして最後に、
「あっ……」
バサァッ、と盛大に木々を揺らしてリリーが出てきたのを見た途端、なのはの目にぽろぽろ涙がたまる。
「はぁ〜い♪ ついさっきぶりね…っとぉ」
「り、リリーさぁん……良かったぁ。ほんとうに、良かった…です」
呑気な挨拶をするリリーの胸元に飛び込み泣き始めるなのは。
少女の雷撃からかばわれてからずっと、後悔や不安が体を渦巻いていた。どうしてあの時動けなかったのか、どうして自分だけ無傷でいるのだろう、リリーは身を盾にしたというのに……
そんな感情の濁流が、リリーを見た瞬間決壊をしたのだ。
「あぁもうすぐ泣いちゃうんだから。ほらほら、泣くのは帰ってから! 今は――」
自分の胸元に収まる亜麻色の髪を一撫でしてから、じろりと視線を前へと向ける。視線の先には金髪の少女。
「
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